アイドル活動をする20代の女性のファンの男がSNSの画像から女性の自宅を割り出し、待ち伏せしてわいせつな行為をしたとされる事件の初公判が、先日開かれた。自撮り画像から自宅の最寄り駅を割り出し、マンションの部屋番号まで特定していたことが明らかになった。こうしたSNSを利用した犯罪に巻き込まれないよう対策を伝授しているのが、本書『あなたのスマホがとにかく危ない』(祥伝社)である。
著者の佐々木成三さんは、埼玉県警捜査一課の元警部補。デジタル捜査班の班長として、デジタル証拠の押収解析を専門としていた。退職後は「一般社団法人スクールポリス」の理事として講演活動をしている。
経験の中では、紛失したスマホが悪用された例や、一度アップされた画像が拡散されて消せないネット上の入れ墨「デジタルタトゥー」となった例も見てきたという。
「第1章 事件はスマホで起きている」では、実例を構成した6つのストーリーを紹介している。
・父親の投稿が原因でストーカー被害に遭った女子高生 ・スマホゲームをきっかけに監禁された小学生 ・空き巣がニヤリと笑った「明日から旅行」のSNS投稿 ・スマホに監視アプリを仕込まれ、浮気がバレて修羅場に ・不適切動画で身元を晒された少年 ・スマホの紛失で始まった恐喝
こうした恐怖を防ぐために、第2章以下で、対策を解説している。ところで、携帯電話やスマホの紛失届は、警視庁だけで年間25万件(2018年)あまりあるそうだ。見つかったものを差し引くと10万台あまりが失くしたまま消えてしまった。
大切な個人情報が詰まったスマホが悪用されると、以下のような犯罪やトラブルに巻き込まれる恐れがある。
・クレジットカードや電子マネー、キャッシュレス決済などの悪用 ・SNSアカウントの乗っ取り、なりすまし利用 ・国際電話や長時間通話の利用 ・振り込め詐欺などの犯罪利用 ・有料アプリの利用 ・電話帳や連絡先などの個人情報の売却 ・スマホ本体の転売
個人情報を守るために、まず「スマホの画面ロックの見直し」を挙げている。簡単な数字の羅列や誕生日をパスワードに使うことの危険性を指摘している。二つ目はSIMカードをロックすることだ。ロックがかかっていないと、別のスマホに差し替えるだけで、契約者になりすまして電話やインターネットが利用できてしまう。三つ目のポイントは「プッシュ通知」への対策だ。ロック画面にLINEやメール、SNSなどのメッセージが表示される設定だと、個人情報を盗み見られる恐れがある。
いくらロックなどを強化しても、自分自身が情報を外部に漏らしている危険な利用法に警鐘を鳴らしている。冒頭のアイドルのケースでは、自撮り写真の瞳に映った景色を手掛かりに女性の住所を特定していた。リスク回避のためには、画質やサイズを落とす、背景にぼかしを入れるなどの対策が必要だ。
また、SNSの「いいね!」にも危険が潜んでいるという。ある女子高生が写真をアップしていたとしよう。悪意のある人物が、「いいね!」をした一人ひとりのページに飛んでプロフィールを確認すると、その層は単一なものになりやすく、学校などが特定されやすいという。
本書では、SNSを安全に使うための設定を、LINE、Twitter、Facebook、Instagramの四大SNSごとに詳しく解説している。共通して絶対に設定しておくのは「二段階認証」だ。そうしておくとアカウントを乗っ取られるリスクは大幅に減る。
いまは小学生がスマホをもつ家庭も多い。親が管理する方法として以下の4点を勧める。
1 有害サイトの閲覧制限 2 利用時間の制限 3 アプリのインストールと利用の制限 4 課金の制限
これらを必ず親子で話し合って決めるのが大切だという。ネットのリスクを子どもに伝えるとともに、親自身のネットリテラシーも常にアップデートして高める努力を、と訴えている。
本書を読み、これまでに携帯電話を1台、スマホを1台紛失したことがある評者は、「はっきり言って、いまあなたが無事なのは"まぐれ"なんです」という本書の言葉がずしりと響いた。さっそく本書に従って安全対策の設定をすることにした。
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