読むべき本、見逃していない?

反抗期のわが子に「くそばばあ」と言われたら

  • 書名 21世紀の「男の子」の親たちへ
  • サブタイトル男子校の先生たちからのアドバイス
  • 監修・編集・著者名おおた としまさ 著
  • 出版社名株式会社祥伝社
  • 出版年月日2019年9月10日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・208ページ
  • ISBN9784396617004

 「男の子の育て方」の本は、育児書のなかでも売れ筋のジャンルという。男の子にありがちな困った言動に対し、特に母親の気持ちに寄り添って書かれたものが多い。本書『21世紀の「男の子」の親たちへ――男子校の先生たちからのアドバイス』(祥伝社)は、それらとは異なる特徴がある。

 「男子校(麻布、栄光、海城、開成、芝、修道、巣鴨、東大寺、桐朋、灘、武蔵)のベテラン先生たちが『これだけは間違いない』ということを根拠に、21世紀のど真ん中を生きる「男の子」の親として心得ておくべきポイントをまとめました」

 聞いたことのある学校名がズラリ。幼少期から勉強漬けで受験戦争に打ち勝った子が集まる学校という印象があったが、本書は受験とは一切関係ない。幼児期から思春期の子をもつ親に向け、もっと本質的な、子がこれからの時代を生きるために大事なことが書かれている。

「現場の先生たちの言葉の結晶」

 著者のおおたとしまささんは、1973年生まれの教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科を中退し、上智大学英語学科卒業。リクルートから独立後、数々の育児・教育誌の編集に携わる。学校、塾、保護者の現状に詳しい。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許を持ち、小学校教員の経験がある。

 グローバル社会、AI時代――。変化の激しい現代は、親世代が「常識」だと信じて疑わなかった価値観が「意外と早くに役立たずになる可能性」が大いにあるという。「親が自分の成功体験や損得勘定をもとに......教育するのは非常に危険です。それで逃げ切れると思ったら大間違い」と、おおたさんは忠告する。

 「先行き不透明な時代には、いい意味で『出たとこ勝負』ができるひとに育てるしかないのです。そのための教育をする必要性が高まっています」

 そこで本書は、21世紀を生きる男の子にどのような感性が求められているのかを明らかにしていきながら、親が無意識に持っている「男らしさ・男のくせに」といった20世紀の男性像とのズレを意識化し、補正することを目的にしている。

 おおたさんの著書『開成・灘・麻布・東大寺・武蔵は転ばせて伸ばす』(2018年、祥伝社新書)に記載されている各男子校の先生の話から特に印象的な言葉を抽出、おおたさんの言葉で整理し直し、学校別ではなくテーマ別に再構成し、新たに他校の先生の言葉を追加したものであり、本書はまさに「現場の先生たちの感性から生まれた言葉の結晶」としている。

スマホはナイフ

 本書は「第1章 21世紀における『いい男』の条件とは?」「第2章 『AI時代』に必要とされるために」「第3章 英語力より大事なものとは?」「第4章 『自由』に耐える力を鍛える」「第5章 いつの時代も必要な3つの力+α」から成る。ここでは、特に印象的だった言葉を厳選して紹介しよう。

 小学生(4年生以上)と中学生の携帯・スマホ普及率はいまや6~7割にのぼり、携帯・スマホをきっかけに事件に巻き込まれるケースが頻発している。麻布・平先生は、スマホをナイフにたとえている。

 「(スマホは)コミュニケーションのツールとして便利だけど、使い方を誤まれば人間を社会的に抹殺することもできるわけですよね。ナイフを渡すのと同じくらいの気持ちで渡してくれないと困るということです」

 この言葉から、おおたさんは危険に対する感度を高める必要性があるとしている。

 「小さいときに火や刃物に十分に触れて、危険との付き合い方、距離の取り方を十分に学んでおいた子供は、その感覚をもとにして、便利だけど危険な文明の利器も比較的短期間で使いこなせるようになるのはないでしょうか」

 親は、防犯・防災のために携帯・スマホを子に持たせる。また、「危ないから触っちゃダメ」と、先回りして子の安全を確保しようとする。目先の便利、安全を追うばかりではなく、子が自分で危険を察知する力を身につけられるように関わることが必要だ。

子と同じ土俵に立たない

 反抗期を迎えた子から「くそばばあ」「死ね」などの暴言を吐かれた場合、ひどくショックを受ける親は多いだろう。親は、そんな事態にどう振る舞えばいいのだろうか。

 「いちいち落ち込んでいたら、あなたその歳になるまで人生で何を学んできたのという話です」(灘・大森先生)

 「スルーはダメだよね。子供なりに発信しているわけですからね。その信号を上手く受け止めてあげないと」(開成・齊藤先生)

 「同じ土俵には立たないほうがいいですよね。向こうも悪いことはわかったうえで言っているんですから。......親の目が覚めれば、子供も目が覚めて、両方成長するんです」(開成・葛西先生)

 「(反抗期を迎えた子が)自分の手元から離れていく、すごくさみしいってよく言わはるんで、それは親としても乗り越えなきゃあかんところで......乗り越えてまた違う愛情みたいなものが出てくる」(東大寺・榊野先生)

 おおたさんが「親の立場からすれば、耳の痛い話も多いかもしれません」と書いているとおり、本書はただ優しく親の背中を押すものではない。「這えば立て、立てば歩めの親心」で親は子に次々と求めてしまうものだが、ここでもおおたさんのピリッとした一言。

 「『自分だってたいしたことないのに、なに贅沢言ってんだ!』と自分を笑い飛ばしてみてください。自分がそんな贅沢を言っていられるのも、息子さんが立派にやってくれているからだということに気づいてください」

 おおたさんと、何千人という男の子を見てきた男子教育のプロによる言葉は、わが子と一対一で向き合い、つい狭くなりがちな親の視野をグッと広げてくれる。

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