お寺に関する書籍は多いが、上手い切り口を考えたものだ。『プチ修行できる お寺めぐり』(産業編集センター)。全日本仏教青年会の監修というから、中身は保証つきだ。浄土宗、曹洞宗、日蓮宗、天台宗、真言宗、臨済宗などおなじみの宗派のお寺が並んでいる。ガイド本だから至れり尽くせり。多くを語る必要はないかもしれないが、簡単に紹介すると――。
本書には北海道から沖縄まで50の寺が登場する。ポイントになっているのは「プチ修行」できるということ。
ページをめくると、まず東京港区の増上寺が登場する。徳川将軍家の墓所として知られる。都心にある、最も大きなお寺だ。ここで可能な修行体験は毎日午前6時からの朝勤行、日曜午前9時からの大殿説教、毎月24日午後6時半からの別時念仏。毎月14日午後2時からの写経会・・・思いのほか、いろいろある。知名度もあり、格式は高いが、開かれたお寺だということが分かる。
東京タワーのすぐそばにあるので、歴史と現代の対比が際立つ。訪れる外国人も多い。色鮮やかな風車を付けたお地蔵さまでも知られる。風の強い夕暮れ時に訪れると、一斉にカラカラ鳴りだして独特の雰囲気に浸れる。
お寺は、関西が本場。ということで、本書には大阪を中心に多数の寺が登場する。比叡山延暦寺や高野山金剛峯寺などはもともと修行の場所だ。宿坊なども紹介されている。泊まったことがあるという経験者も少なくないのではないか。
交通の便が良い大寺は奈良市内にある東大寺。こちらも写経、写仏、「仏法興隆花まつり 千僧法要」などが紹介されている。「大仏奉賛会」に入ると、折々の催事の案内が届く。大仏様とのつながりを一段と深くすることができそうだ。
最近はお寺に若い女性客も増えている。仏像ガールもマスコミで話題になった。拍車をかけたのは10年ほど前の「阿修羅ブーム」だろうか。東京国立博物館の展覧会には94万人が詰めかけた。中高年客だけでは、この数字にならない。
もちろんそれ以前からの京都ブームもある。「観光寺」と呼ばれるようなお寺はたいがい、境内がきれいに掃き清められ、草花の手入れが行き届いている。聖なる別空間に入った気がして心が洗われる。
本書はカラー写真も盛りだくさん。精進料理の写真なども紹介されている。アクセスなどのデータも丁寧だ。お坊さんからのメッセージも掲載されている。坐禅なども含めて「プチ修行」に惹かれる人にとっては格好のガイド本だろう。お寺や仏像を見るだけでは飽き足らない「ワンクラス上」の仏教ガールをめざす人にとっては、嬉しい手引書かもしれない。「修行体験500円引き」、「お守りプレゼント」など、本書オリジナル特典もついている。
本書で紹介されている寺以外でも、一般向けに様々な取り組みをしている寺はまだまだある。ネットで調べてみるといいだろう。
本欄では関連で、『東京から日帰りで会える 仏像参り』(幻冬舎)、『阿修羅像のひみつ』(朝日新聞出版)、『土門拳の写真撮影入門』(ポプラ社)、『どこにでも神様』(新潮社)、『奉納百景』(駒草出版)、『京都の庭園』(京都大学学術出版会)、『秘境神社めぐり』(ジー・ビー)なども紹介している。
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