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足利義政は今の銀閣寺を知らない!

京都の庭園

 ゴールデンウィークには、京都へ行き、お寺や庭園を見て回ろうと予定している人も多いだろう。京都には御所・離宮や寺社の歴史的な名庭園が数多く残されているほか、庶民もうなぎの寝床と形容される独特の町屋に趣向をこらした庭を工夫してきた。

 本書『京都の庭園』(京都大学学術出版会)は、庭園史研究家の飛田範夫さん(京都大学論文博士=農学)が、『江戸の庭園』、『大坂の庭園』につづいて、京都の庭園を上下2巻で、その歴史を書いたもの。上巻は皇室と公家・武家屋敷の庭園を紹介しているが、寺社や町屋の庭園を取り上げている下巻がなんといっても面白い。

 先日(2018年4月14日)NHKの「ブラタモリ」で、京都の銀閣寺(慈照寺)は室町幕府の将軍足利義政が権力や世俗に背を向けるように、東山の山麓に造営したと伝えていた。しかし、本書によると、義政は観音殿(銀閣)の完成を見ずに亡くなったそうだ。戦乱でいくつかの建物は焼失し、織田信長が池の石を二条城に運び去ったりしたため、庭は荒廃した。江戸時代に家康に仕えた武将の宮城豊盛が大規模な改修工事を行い、現在の姿になった。池を縮小し、土を盛ったと見られる。それでも近年の発掘調査で銀閣は当初の位置を動いていないことが判明したという。長い年月をかけて京都の庭園は整備されたことが分かる。

 銀閣寺の例もそうだが、京都の寺院は江戸幕府が支援したものが多い。また大名が菩提寺として建てた寺院も少なくないという。京都に自分の家の菩提寺として寺院を建立・復興することが地方の大名や武将にとって名誉なことだったらしい。

 江戸時代まで寺院は広大な領地を持っていたが、明治4年と8年に「上知令」が出され、本堂が建つ境内以外の土地が取り上げられた。特に禅宗系の寺院の打撃は大きく、妙心寺大通院の庭園など多くの庭園が消滅した。また鉄道敷設によってもいくつかの名園が破壊されたという。

 本書に挿入されている名勝図絵を見ると、京都は現在とは比べものにならないくらい広大で美しい庭園にあふれていたことが分かる。もし明治時代の庭園破壊がなければ、世界に例のない「庭園都市」が残っていただろう。そんなメッセージが本書から伝わってくる。  

  • 書名 京都の庭園
  • サブタイトル御所から町屋まで
  • 監修・編集・著者名飛田範夫 著
  • 出版社名京都大学学術出版会
  • 出版年月日2017年7月15日
  • 定価本体1900円+税
  • 判型・ページ数四六判・251ページ
  • ISBN9784814001026
  • 備考上下2巻
 

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