銀行員、半沢直樹シリーズの第5弾が文庫本化された。今回、半沢に与えられたミッションは「帝国航空」なる巨大航空会社の再建である。政府主導の再建機関がつきつけてきたのは、500億円もの債権放棄だった。とても飲める条件ではない、この難局に半沢が果敢に立ち向かう。
初出は週刊ダイヤモンド連載(2013年5月~2014年4月)で、ちょうどTBSのテレビドラマ「半沢直樹」が放送され、話題になった時期である。銀行内部の葛藤が描かれた前シリーズよりも舞台はスケールアップし、政界が今回の敵である。
「帝国航空」のモデルは日本航空であることは言うまでもない。現実には銀行団が4000億円もの債権を放棄し、さらに公的資金が注入され、日本航空は再建された。こうした再建劇を下敷きとしながら、作者池井戸潤さんの筆は縦横に走り、悪役も含めて魅力的な人物造形がされている。
半沢が勤める東京中央銀行は、旧東京第一銀行と旧産業中央銀行が合併して誕生したメガバンクだ。本シリーズではお約束の銀行内部での不正と隠蔽工作、それにかかわる行内の暗闘もたっぷり描かれている。「そんな検査部の旧S(産業中央銀行)野郎なんざ、窓際もいいところで、なんの力もありゃしない。ひねり潰してやろうじゃないか」などというセリフが飛び交う。
テレビドラマでは片岡愛之助が演じた黒崎も金融庁の検査官として登場し、独特のパフォーマンスを演じる。このくだりは作者があて書きで書いているのではと思われるほどで、読みながら愛之助の顔が浮かんできてしょうがなかった。
本作は半沢一人が活躍するというよりもチームプレイの勝利という印象がする。政財界がからんだ航空会社再建というスキームの巨大さ、複雑さに応じて、「半沢直樹」シリーズも進化したというべきだろう。単行本は2014年にダイヤモンド社から刊行された。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?