ネット時代が進化してSNSが定着するなど、だれでも容易に発信ができるようになった近年、自分勝手な正義を振りかざし、それに合わない人物をターゲットにして非難する行動が目立つようになった。"クレーマー"や"モンスター"など、困った人たちはこれまでにもいたが、著者が「危ない人」と呼ぶ新時代の困った存在は、自分が信じる正しさをゴリ押しすることでカタルシスを求めるタイプだ。本書は、そういう人たちとの遭遇に備えた傾向と対策。
著者の榎本博明さんは心理学者で、その研究をベースに企業研修や講演を行っている。これまでにも、社会の複雑化とともに変化した人間心理をテーマに「『上から目線』の構造」「お子様上司の時代」「『俺は聞いてない!』と怒りだす人たち」などの著書がある。
「危ない人」たちはネットでとくに増殖中。芸能界ネタには敏感だ。歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが2017年7月、妻の小林麻央さんを失くして間もないときに子どもたちを連れ東京ディズニーランドに行ったとされ、このことが明らかになると、服喪中に不謹慎、切り替え早過ぎなどの批判が寄せられたことが報じられた。著者は「大切な母親を亡くした幼い子どもたちを元気づけたいという気持ちをもつのが批判されるべきことなのか」と逆に批判。「そこに漂うのは、正義感という仮面を被った攻撃性である」と指摘する。芸能人同士の不倫では、一方あるいは双方に激しいバッシングが起きるが「なぜそこまでムキになるのだろうか」と疑問を呈する。
芸能人の行動やネットを離れても「危ない人」は、さまざまな場所で"毒"をまき散らしている。自分考えている方法と異なる仕事の進め方をみて「手順が違う」と詰め寄る人、接客態度が自分と違う店員仲間に説教口調で迫る同僚...。こうした人たちはまた、自分が主張したやり方が間違っていた場合でも、それを素直に認めないところがあるという。
「危ない人」たちは、自分が正しいと思えないものは悪であり、理解しようとはせずに攻撃の対象にしてしまう。多角的な検討ができない「認知的複雑性が乏しい」人物。そうした存在が増殖しているのは、情報があふれるネット時代が背景にある。ニュースはどのカテゴリーでも表面的なスキャンダラスで刺激の強い面が増幅されて拡散されて、不公平感やいらだちが募り、歪んだ正義感が醸成されるのではないかという。
フリーライターの桃村茶保さんは産経新聞(2017年11月26日付)の書評で「本書を読めば、身の回りにいる誰かが目に浮かび、他人事(ひとごと)ではすまなくなるはず。問題意識と危機感の共有を促してくれる一冊だ」と述べている。
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