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ヒトの脳には、なぜシワがある? 小説みたいに読める脳科学

小説みたいに楽しく読める脳科学講義

 2023年07月27日、大隅典子さんの新著『小説みたいに楽しく読める脳科学講義』(羊土社)が発売された。その中から、みんなが抱く素朴な疑問について紹介する。

『小説みたいに楽しく読める脳科学講義』大隅典子(羊土社)書影
『小説みたいに楽しく読める脳科学講義』大隅典子(羊土社)

マウスの脳にはシワがない

 ヒトの脳には多数のシワがある。他の動物も同じだろうと考えがちだが、実は、哺乳類にも大脳表面にシワのある動物とそうでない動物がいるという。たとえば、霊長類や鯨類などの脳にはシワがあり、マウスやラット、モルモットにはない。基本的には、大きな脳をもち、高度な機能をもつ動物の方が、シワをもつ傾向があるとされる。

 ではこのシワは、いったい何のためにあるのか。これは、大きな脳を限られた容積の頭蓋に収めるために必要なものだとされる。実際、ヒトの大脳皮質を広げると千六百~二千平方センチメートルにもなり、これは、頭蓋骨の内側の表面積の約三倍だという。この収納力は、大きな脳を持つ動物には必須の機能なのだ。

脳にシワを持たないヒトもいる

 しかし、シワを持たないヒトも存在する。「滑脳症(かつのうしょう)」と呼ばれる先天的な疾患を持つヒトは、脳にシワがなく、表面がつるっとしている。研究者たちはこの滑脳症に注目し、滑脳症患者と健常者の遺伝子構成を比較して、脳にシワを作る遺伝子を特定、さらに特定された遺伝子の脳への影響をマウスを用いて実証した。

 さらに実験は進み、今度はヒトとマウスの遺伝子構成を比較し、脳のシワに影響を与えそうな遺伝子を特定。そして2015年、マウスの発生途中の脳原基にこの遺伝子を導入してみると、本来、「滑脳症」状態であるマウスの脳にシワをつくることに成功したという。

 このほか、「アインシュタインの脳は普通より小さい」「男女での脳の差はほとんど確認されていない」など、脳にかんする興味深い知識がたくさん。未知の世界への好奇心を満たすことができる1冊だ。


※画像提供:羊土社

 
  • 書名 小説みたいに楽しく読める脳科学講義
  • 監修・編集・著者名大隅典子 著
  • 出版社名羊土社
  • 出版年月日2023年7月27日
  • 定価2,420円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・216ページ
  • ISBN9784758121293

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