全国一斉休校、行事の中止・延期、夏休みの短縮......と、子どもを取り巻く状況はイレギュラー続き。子育てに正解はないとしても、将来から逆算して「いまこれをしておくといい!」というヒントはほしいもの。先行きが見通せないいまはなおのこと、なにか道を指し示してくれるものがあったら......と思う親は多いだろう。
茂木健一郎さんの本書『脳科学者が子どものために考えた 夢をかなえる力ののばし方』(宝島社)は、こんなときこそぜひ親子で読んでおきたい一冊。大人になる前に身につけておきたい「これからの時代を生き抜く50のヒント」を伝授している。
「きみたちが大人になったときには、これまでの成功のルールや正解は通じなくなっている。じゃあ、そんな"答えのない時代"を生き抜くために、何をしたらいいんだろう?」
冒頭の「無限の可能性を持つきみたちへ」では、「いま世の中は、ものすごい速さで変化している。インターネットや人工知能が急速に発達して、100年に一度と言われるほどの激変の時代を迎えているんだ」として、子どもたちにこんなメッセージを送っている。
「この本では、これからの未来を生き抜くために必要な力を6つにまとめているよ。『チャレンジ力』『失敗力』『友だち力』『勉強力』『夢中力』『夢をかなえる力』――。どれも学校や教科書では教わらないけれど、21世紀に活躍する人になるためには大事な力なんだ」
「脳には限界なんてないから、きみたちには、いつだって無限の可能性がある。だから、新しい世界にどんどん飛び込んで『なりたい自分』に近づこう!」
これらの能力があれば人工知能時代も乗り越えていける、としている。本書は、以下の6つのパートに計50のヒントが収録されている。1つのヒントにつき2ページの構成。
1 「チャレンジ力」をつけて自分をレベルアップ!
挑戦すればするほど脳は成長するから、どんどんチャレンジしよう!
2 ピンチをチャンスに変える「失敗力」の鍛え方
失敗すればするほど脳は成長するんだ。だから、失敗は怖がらなくていいんだよ。
3 大人になっても役立つ「友だち力」を高めよう!
学校以外にも、本当に気が合う友だちは必ずいるよ。
4 教科書では学べない本当の「勉強力」の育て方
本当に必要な、「自分の頭で考える力」を身につけよう!
5 「夢中力」をのばして"なりたい自分"になる!
何かに"ハマった体験"がある人ほどのびるから。
6 「夢をかなえる力」を育てよう!
"なりたい自分"になるために、どんどん心と体を動かそう!
2015年に野村総合研究所から「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」と発表されたが、AIに奪われない職業、AI時代に必要な能力というのは、やはり気になるところ。本書では「人工知能」に関連する話がいくつか出てくる。
たとえば「21 『雑談力』を鍛えよう」。雑談はさまざまな話題が飛び交い、瞬時に文脈が切り替わったりするので、とても高度で知的な営み。大人になっても役立つ能力、としている。
「ただ知識をたくさん持っているだけじゃなくて、相手に伝わりやすく話したり、みんなを楽しくさせたり、話題をふったりできる。これは人工知能には、できないこと」
続いて「49 人工知能に負けない『直感力』を鍛えよう」。直感力は自分の体を使っていろいろなことを経験、行動することで鍛えられる、としている。
「人間は、計算の速さでは人工知能に勝てないけれど、直感力では負けない! 『直感』って、なぜそれを選んだのかは説明できないんだけれど、それまでに経験したことから、自分の体が選んだ答えなんだ」
そのほか、コラム「ぼくの子ども時代」も興味深い。茂木さんがちょっと変わった小学生だったことをうかがわせるエピソードを披露している。
たとえば、小学校に入学した日、じっと座っていられず先生から注意された。うしろで見ていた親たちにいっせいに笑われて、すごく恥ずかしかった。2年生のときには、授業中にねんど消しゴムで人形をつくっていたら先生に見つかり、教室のうしろで正座をさせられた、など。「たくさん遊んでたくさん失敗した子が一番のびる!」とあるが、茂木さんはこの言葉を体現したような方だと思った。
本書はむずかしい話は一切抜きに、子どもたちに直接語りかけるようなやさしい文体で書かれている。豊富なカラーイラスト、ふりがな、ほどよい文章量と、小学校低学年から一人でもすらすら読めるだろう。親と子がそれぞれに読んで、意識を共有するのがよさそうだ。
おわりに、親にとって子育ての道しるべになりそうなメッセージを見つけた。
「いま大人たちがやるべきなのは、子どもを信じて好きなことをやらせてあげることです。......失敗したときや悩んでいるときは、フォローすることも大切です」
「これからの"答えのない時代"を生き抜く力をつけるためには、子どもの頃から失敗を怖がらずチャレンジする土台を育てておくべきなのです」
茂木健一郎さんは、1962年東京都生まれ。脳科学者。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。2005年に第4回小林秀雄賞を受賞した『脳と仮想』(新潮社)など、著書多数。
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