読むべき本、見逃していない?

高専から東大最年少准教授への道、どう切り開いたか

  • 書名 AI救国論
  • 監修・編集・著者名大澤昇平 著
  • 出版社名新潮社
  • 出版年月日2019年9月20日
  • 定価本体780円+税
  • 判型・ページ数新書判・235ページ
  • ISBN9784106108280

 「31歳、東大最年少准教授が挑む、日本再生へのブレイクスルー」という本の帯が目に入り、買い求めたのが本書『AI救国論』(新潮新書)である。ウェブとAIが融合する「AI2.0」の時代に我々はどう対応するのかを提言した本だ。

進学校を選ばず高専へ

 著者の大澤昇平さんは、1987年福島県生まれ。略歴の「19歳で未踏スーパークリエータに認定」というあたりから読者は、「あれ? 高校と大学はどうしたの?」と思うかもしれない。それは後述するとして、その後、東京大学・松尾豊研究室で人工知能とウェブに関する博士号を取得後、IBM東京基礎研究所を経て、東京大学特任准教授、株式会社Daisy代表取締役CEOを兼任という略歴の人だ。 自分のキャリアについて詳しく書いている。大澤さんが今日あるのは、高校に行かず、高専に進学したからだと。

 福島県いわき市の「中流よりやや貧困層」という家庭で育ったという。エンジニアであった父親が3歳の大澤さんにBASICを使ったプログラミングを教えたのが大きかった。小学校に上がるとゲームなどには見向きもせず、パソコンで惑星軌道の物理シミュレーションを行い、自分の仮説が合っているかを確かめていたというからかなり早熟だ。

 小学校を卒業する時には微分積分を自由に操れるようになり、中学校でも成績はトップクラスだったが、進学校には進まず、高等専門学校、いわゆる高専に行ったことで、5年もキャリアを早めることができたという。高専時代に磨いたプログラミングの技術がその後役に立ったのだ。

 高専から筑波大学に入り、最終的に東大大学院の博士課程に進み、その後は略歴にある通りだ。

テクノロジストを増やすには

 「日本衰退の責任は若手の実力不足にある」というタイトルの第1章で、日本の衰退の原因は、企業の組織構造にあるのではなく、若手を教育するシステムのバージョンの古さにある、と指摘している。企業はテクノロジーがわかる管理職を求めているが、「実際には手に職を持ったIT土方タイプか、口だけ動かす高学歴ジェネラリストに二極分化されており、その中間であるテクノロジストがほとんど存在しない」と嘆く。

 その解決策として、「大学生活の回り道、高専というファストパス」の活用を提案している。高専は高等専門学校機構の5年制の学校で、全国の都道府県にだいたい1校ある。もともと技術者の養成を目的につくられたが、最近は半数が大学に進学(大学2、3年生からの編入)している。

 東大で進学校から来た学生は自分より優秀な高専出身者に対して、「ずるい」という言葉を使うという。「自分が受験勉強している間に、プログラミングを勉強するなんて、それは勝てて当たり前だ」と。だが、受験勉強を選択したのは、自分自身なのだ、と大澤さんは諭している。

 本書は「第2章 なぜコンサルタントがエンジニアより偉いのか」「第3章 水平思考で『意外な組み合わせ』を発見せよ」「第4章 AIが製造業復権と地方創生をもたらす」「第5章 『AI2.0』:ウェブとの融合で価値無限大」「第6章 『文理融合型教育』でシナジーを創出せよ」というのが本論にあたる。だが、高専に焦点を当てた第1章が著者の経歴とあいまって、あまりに面白かったので、本稿でもそこに言及した。

 高専は地方の各県にもあるので、地方銀行と連携した製造業の復権、地方創生という第4章も大きなヒントになるだろう。

 BOOKウォッチでは、高専関連で『高専教育の発見』(岩波書店)を紹介した。発足して50年以上になるのに、高専の役割や卒業生のその後についての検証があまりなされていなかったという。同書でも学歴よりも学習歴が評価される「高専モデル」を提唱していた。高専出身者の星とも言える大澤さんの出現は、高専にとって大きな希望になるに違いない。

 

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