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ほめ言葉は「現金」と同じ! 脳科学者が教える自己肯定感の高め方

賢くしなやかに生きる脳の使い方100

 2023年5月31日、脳科学者・中野信子さんの新著『賢くしなやかに生きる脳の使い方100』(宝島社)が発売された。脳科学の知見をベースにした考え方や、不安や恐れに対する具体的な対処法をわかりやすく紹介する内容で、賢くしなやかに生きるための100のメソッドが紹介されている。

 今回は、そのメソッドの中から「相手とのあいだに信頼感を生み出す方法」と「自己肯定感を高める脳の使い方」を紹介する。

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幸せホルモン 「オキシトシン」が距離を近づける

 人と人との信頼関係を、臨床心理学では 「ラポール」と呼ぶ。このラポールの形成にかかわっていると考えられているのが、「幸せホルモン」とも呼ばれる、脳内物質「オキシトシン」だ。

 オキシトシンは、脳の視床下部で合成され、下垂体後葉という部分から分泌される。主に相手に親近感を持たせたり、愛着を感じさせたりする働きを持ち、相手と見つめ合って話すだけでも分泌されることがわかっている。また、手を握ったり、肩や膝を触ったりするなどのスキンシップによっても分泌がうながされるとされる。

 しかし、「見つめ合って話したり、手を握ったりできる」相手とはもう信頼関係が築けているともいえる。初対面の相手とラポールを形成するにはどうすればいいのか。

 中野さんがオススメするのは、「相手の名前を呼ぶこと」だ。ボディタッチができなくとも、相手に名前で呼びかけるだけで十分に効果はあるそう。相手の話の速度・声の大きさに合わせて話すこと、相手の表情に合わせて話すことも有効だという。

利他的に行動すれば自己肯定感が上がる

 一方、自己肯定感をあげるために必要なのは、「他人からほめられる」ことだ。脳には快感を生み出すことにかかわる部分があり、それらが刺激されると大きなよろこびを感じるようになっている。そして、その仕組みを調べた自然科学研究機構生理学研究所の定藤規弘教授の研究によると、「ほめ言葉をかけられたとき」と、「現金を受け取ったとき」のよろこびは同じようなものなのだという。

 しかも、これらの脳のなかの快感を生み出す部分が刺激されると、「ナチュラルキラー細胞」(ウイルス感染細胞やがん細胞を攻撃するリンパ球)が活発になるため、健康にもいいことが別の複数の研究でもあきらかになっている。

 また、別に他人にほめられなくても、自分自身でよい評価をするだけでも快感を得ることはできる。自分で自分を高く評価するとき、脳では「内側前頭前野」という部分が、「自分は素晴らしい」「自分はよいことをした」と判断し、快感が生まれる。

 もちろん、もっとも良いのは、自分で自分を評価した上で、他人からも評価されること。つまり人間は、他人にほめられるよう利他的に行動すると、利己的に行動した場合よりもより大きな快感や自己肯定感を得られる場合がある。人間の脳は、利他的に行動することが同時に自分のためにもなるようにできているのだ。


■中野信子さんプロフィール
なかの・のぶこ/脳科学者、医学博士、認知科学者。1975年、東京都に生まれる。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科修了、脳神経医学博士号取得。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。現在は、東日本国際大学教授として教鞭を執るほか、脳科学や心理学の知見を活かし、マスメディアにおいても社会現象や事件に対する解説やコメント活動を行っている。著書に『サイコパス』『不倫』(ともに文藝春秋)、『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)、『脳の闇』(新潮社)などがある。


※画像提供:宝島社

  • 書名 賢くしなやかに生きる脳の使い方100
  • 監修・編集・著者名中野 信子 著
  • 出版社名宝島社
  • 出版年月日2023年5月31日
  • 定価1,320円 (税込)
  • 判型・ページ数四六判・240ページ
  • ISBN9784299032225

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