「恐るべし平野レミ。真っ直ぐ素直にたがを外してものを観る。世間に媚びず昂ぶらず超純粋な情動は、すでに不敵なアイデアなのである」
料理研究家の土井善晴さんにこう言わしめた、平野レミさんのお料理エッセイ集が新たに登場した。
2023年2月15日に発売された『エプロン手帖』(ポプラ社)は、料理愛好家として活躍中の平野レミさんによるエッセイ集。夫の和田誠さんや両親との料理にまつわるおいしい思い出、子ども時代の味覚の記憶......そんな、平野さんの「料理の原点」をひも解く珠玉のエピソードが掲載されている。
さらには53品のオリジナルレシピも収録され、食べごたえばつぐんの1冊だ。
本書に収録されている料理の写真は、すべて平野さん自身が撮影したもの。私物の食器に、夫の和田さんがデザインしたポスターを敷くなど、スタイリングまで手がけた。撮影助手の和田さんと一緒に料理の写真を撮ったことは、とてもいい思い出になっているのだとか。
プロの飲食店で食事をするときは、よくノートを持参してメモをとるという。親切に作り方を教えてくれるシェフや板前の話を聞きながら、平野さんはそれを自分で「翻案」するのだ。
「プロの料理はたいてい材料が凝ったものだし、手間ひまかかるので、私は主婦らしい素材を使って時間もかからないように翻案しながら、プロの味に近づける工夫をします」
本書の「おわりに」で、平野さんはこう述べている。
「いつの間にか料理の仕事が増えたけれど、私はいつまでもアマチュアのつもり。台所にいることが好きな主婦です。専門用語もあまり知らないし、お料理はたいてい自己流です」
料理研究家になる前はシャンソン歌手だった平野さん。料理の世界に途中から飛び込んだからこそ、プロとアマチュア両方の視点を持ち続けながら新しい料理を生み出せるのかもしれない。
■平野レミさんプロフィール
ひらの・れみ/料理愛好家、シャンソン歌手。主婦として料理を作り続けた経験を生かし、「平野レミの早わざレシピ」(NHK)などテレビ、雑誌を通じて数々のアイデア料理を発信。レミパンやエプロンなどキッチングッズの開発も手がける。2022年、『おいしい子育て』(ポプラ社)で第9回料理レシピ本大賞エッセイ賞受賞。著書に『ドレミの子守歌』(中央公論新社)、『平野レミのオールスターレシピ』(主婦の友社)、『家族の味』(ポプラ社)など多数。
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