「ギフティッド(Gifted)」と聞くと、どんなイメージがあるだろうか。天才? 神童?
言葉の印象ばかりがひとり歩きして、実際のギフティッド者の生きづらさが見えにくくなっている現実がある。このたび第5刷重版された『ギフティッド その誤診と重複診断』(北大路書房)から、ギフティッドの正しい理解を深めよう。
ギフティッドと聞くと、いわゆる「天才」が思い浮かびやすいかもしれない。しかし、ギフティッドが必ずしもわかりやすい「天才」というわけではない。むしろ、普通に見える子がギフティッド特有の生きづらさや困難を抱えていることが多いという。ギフティッドはわかりやすい特性ではなく、「スペクトラム(境界があいまいで,連続的であること)」としてとらえることが重要だ。
「ギフティッドとは何か」という問題は今も議論が続いており、明確に「どの程度ならギフティッド」という定義は決まっていないそうだ。
ギフティッドが発達障害の一種だと捉えている人もいるかもしれない。ギフティッドと発達障害は、別個の特性だ。両方の特性をもちあわせている場合、2E(twice-exceptional)と呼ばれる。
ギフティッド児や成人ギフティッドがなりやすい障害もあるが、そのような場合、ギフティッドの優れた才能ばかりが目立ち、障害が見えにくくなって適切な診断がされづらくなるという問題がある。実は、医師などの専門家の間でもギフティッドが十分に理解されておらず、ギフティッドは発達障害や、そのほか精神疾患を主とする様々な疾患と誤診されているという。
ギフティッド児を診断する際、知的能力や創造性の要素ばかりがフォーカスされ、社会的・情緒的な要素が見落とされてしまう場合がある。本書によると、ギフティッドには、以下のような社会的・情緒的な特性がある。
・年齢の割に並外れて語彙が豊富で文章構造も複雑である。
・好奇心が非常に強く早熟で,質問はとどまることがない。
・想像上の友だちが大勢いる。
・並外れたユーモアがある。
・複雑なゲームを考案するなど,人々やものごとを仕切りたがる。
これらがギフティッドの特性だと理解されていない場合、障害だと誤診されてしまう。
ギフティッド児の多くは、自分がギフティッドだとは思っておらず、また成人ギフティッドは自分に特別な知的能力や創造性があることを積極的に否定することもあるという。「天才」といった周囲の決めつけとのギャップによって、ギフティッド者は生きづらさを感じている。周囲の要求に適応できず、精神疾患を患うこともありうると本書では述べられている。
「天才でいいな」、「この子はギフティッドなんだからいい未来が待っているに違いない」、あるいは「場所さえあれば勝手に伸びるから場所さえ与えればいい」といった期待や偏見、決めつけは、ギフティッド者を生きづらくしてしまう。本書はギフティッドを正しく理解し、必要な支援を考える手引きとなる一冊だ。
【目次】
第1章 ギフティッド児・成人ギフティッドの特性
第2章 ギフティッド児と成人ギフティッドの誤診と重複診断
第3章 注意欠如・多動症
第4章 怒りの診断
第5章 観念性疾患・不安症群
第6章 気分(感情)障害
第7章 学習障害
第8章 睡眠障害
第9章 アレルギー,喘息,反応性低血糖症
第10章 嗜癖性障害群
第11章 ギフティッド児や成人ギフティッドが抱える対人関係の問題
第12章 診断のプロセス
第13章 ギフティッドの行動特性と病理学的行動との識別
第14章 ギフティッド児・成人ギフティッドのための医療機関,カウンセラーを見つける
第15章 資料
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