「不撓不屈(ふとうふくつ)の精神で、力士として不惜身命(ふしゃくしんみょう)を貫く所存でございます」
1994年、貴乃花が大関昇進伝達式で述べた口上だ。あれからもう30年近く経つなんて......という感慨はさておき、四字熟語で表すと、ちょっとカッコよく聞こえる。一方で、読めない、意味がわからない、なんとなくわかるけれど自分の言葉で説明はできない、という人も多いのでは。
そんな小難しい四字熟語の意味を笑いながら覚えることができるのが本書、『5文字で四文字熟語』(講談社)だ。
たとえば、一石二鳥は「倍リターン」。言語道断は「話にならん」、阿鼻叫喚は「うわひどい」...といった調子で、やさしい言葉に置き換えてくれる。ふざけているようで、下記のように意味や由来などしっかりとした解説がついているのも特徴だ。
抱腹絶倒(ほうふくぜっとう)...「マジうける」
「抱腹」は、おなかをかかえること。「絶倒」とは、倒れそうになるくらい笑うこと。
(中略)
もともとは「捧腹絶倒」と書いた。「捧」も「抱」もここではおなじ意味。
中国の文学者・蘇軾(そしょく)が自分をあざけってつかった。
では、ここで頭の体操だ。次の四字熟語を5文字で表してみてほしい。
1.有言実行(ゆうげんじっこう)
2.付和雷同(ふわらいどう)
3.波瀾万丈(はらんばんじょう)
4.乾坤一擲(けんこんいってき)
5.五里霧中(ごりむちゅう)
ちなみに、四文字の漢字であれば、なんでも四字熟語になるわけではない。本書によれば、四字熟語とは、漢字四文字でできているほか、「昔から使われていること」、そして、「文字がつながることで、もともとなかった意味が生まれていること」という条件を満たすもの、と定義されている。
テストで「『〇肉〇食』が四字熟語になるよう〇に漢字を入れなさい」という問題に、「焼」と「定」を入れて×をもらった、という人もいるかもしれない。「焼肉定食」は、「焼肉」と「定食」にわけても意味が通じるため、四字熟語には当てはまらないのだ。(答えは「弱肉強食」。「弱肉」と「強食」にわけると意味が伝わらない。)
著者のすとうけんたろうさんは、あとがきで「なるべくもとの文字をつかわず、もとの四字熟語よりかんたんにしようとしたけど、やってみるとむずかしかった」と書いている(ちなみに本書は、小学生向けに書かれている)。たった5文字で的を射た言葉に置き換えるには、もとの四字熟語の意味をしっかりと理解し、なおかつユーモアのセンスとイマドキの語彙がなければ、できないワザだ。
てっきり漢字博士か辞書編纂者かと思いきや、すとうさんは、東大大学院の工学系研究科を卒業、元Googleエンジニア、現在はAI技術研究をしているという理系男子だ。四字熟語からはもっとも遠いイメージだが、プログラミングが趣味で、個人のウェブサイトでテキストを入力すると、古文や津軽弁などに変換するツールなどを紹介している。
さて、上の四字熟語、5文字で説明できただろうか? すとうさんの「名訳」を紹介しよう。
1.有言実行→やりますよ
2.付和雷同→イエスマン
3.波瀾万丈→絶叫コース
4.乾坤一擲→えいままよ
5.五里霧中→ここはどこ
どんなに苦心惨憺しても、すとうさんのようにうまく言い換えるテクニックは、一朝一夕には身につかない。試行錯誤を続ければ、いつかすとうさんを超える名訳が生まれるかも?
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