「いいくに（1192）作ろう鎌倉幕府」と覚えたのが、「いいはこ（1185）」になったと聞いて、衝撃を受けた人は少なくないだろう。
近年、歴史の研究が進んだことで、かつての日本史の常識は次々に覆っている。それに合わせて、いまの歴史教科書も、大人が学生時代に使っていたものとは別物になっているらしい。
個人的には、千年も前の出来事に7年くらいの誤差があろうと、正直どうでもいい気もするのだが、子供に「違うよ」と指摘されるのも悔しい。「教科書なんて懐かしい......」という世代も知識をアップデートしたいところだが、いまさら日本史を学び直すのもなぁ......というのが正直な気持ち。そんな時に頼りたいのが『面白すぎる！ 日本史の授業』だ。
本書は、歴史大好き芸人・ブロードキャスト!!の房野（ぼうの）さんと、『世界一受けたい授業』でもおなじみの歴史評論家・河合敦さんがタッグを組んだ一冊。日本でトップクラスに歴史解説が上手い2人が、日本史がどう変わったのかを「わかりやすく・おもしろく」教えてくれる。
冒頭の「イイクニ」か「イイハコ」か問題も、しっかり解説されている。実は、この話をメディアで広めたのはこの本の著者である河合さんなのだという。
ところが、ここで衝撃の事実。話を広めた張本人の河合さんが、「でもはっきり言ってこの話、ウソなのである」と本の中で宣言しているのだ。
なぜ、「イイハコ」説がウソなのか？ 実際のところ、鎌倉幕府の成立年には確定した説がない。だから、「「イイハコ」になった」と断言することもできない......ということらしい。
では、幕府の成立年に確定した説がないのはなぜか。それは、そもそも「幕府」の定義がハッキリしていないからだという。源頼朝が作った政権が「幕府」と呼ばれ始めたのは江戸時代中期以降。当時の人は鎌倉幕府のことを「幕府」とは呼んでいなかったのだ。
つまり幕府とは、鎌倉時代を後世から振り返った人々が頼朝の作った政権に便宜上付けた名前であり、メチャクチャ扱いづらい学術用語のことを指す。言い換えれば、鎌倉時代には鎌倉幕府という概念は無かったのだ。びっくり！ 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で幕府の成立がどう描かれるのかも、注目されるところだ。
本書では他にも、一見信じられないような日本史の変化が紹介されている。坂本龍馬が第三者の立場で薩長同盟を取り持ち、時代を変えた......というのはウソ。織田信長が先進的な戦法を使うことで劣勢を覆し、長篠の戦いに勝った......というのもウソ。江戸時代、日本は鎖国していたので長崎の出島以外では外国文化に触れられなかった......というのもウソ。
イラストもシュールで面白い。本書を見て「日本史ってこんなに変わってたのか......」とビックリした人は、時代に取り残されているかも。『面白すぎる！ 日本史の授業』でもう一度歴史に触れて、知識を最新にアップデートしておこう。
■河合敦（かわい・あつし）さんプロフィール
歴史研究家・歴史作家。多摩大学客員教授・早稲田大学非常勤講師。1965年、東京都生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業。早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学。
歴史書籍の執筆、監修のほか、講演やテレビ出演も精力的にこなす。著書に『日本史は逆から学べ 近現代から原始・古代まで「どうしてそうなった?」でさかのぼる』(光文社)『早わかり日本史』(日本実業出版社)、『教科書の常識がくつがえる! 最新の日本史』(青春出版)『逆転大名 関ヶ原からの復活』『ニュースがよくわかる日本史 近現代編』(ともに祥伝社)など多数。
■房野史典（ぼうの・ふみのり）さんプロフィール
1980年岡山県生まれ。名古屋学院大学卒業。お笑いコンビ「ブロードキャスト!!」のツッコミ担当。無類の戦国武将&幕末好きで、歴史好き芸人ユニット「六文ジャー」を結成し、歴史活動も盛ん。
初の著書『笑って泣いてドラマチックに学ぶ 超現代語訳 戦国時代』(小社刊)がブレイクし、その後の著書に『時空を超えて面白い!戦国武将の超絶カッコいい話』(王様文庫)、『笑えて、泣けて、するする頭に入る 超現代語訳 幕末物語』(幻冬舎刊)がある。
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