おしっこを飲む、ヒルに噛ませる、頭蓋骨にドリルで穴を開ける。拷問の話? そうではない。実はこれ、どれもかつて本当にあった病気の治療法なのだ。
イギリスの絵本作家のクライブ・ギフォードさんによる、歴史上のトンデモ医療がこれでもかと詰め込まれた絵本『おしっこ、ヒル、頭にドリル 本当にあったトンデモナイちりょう』(化学同人)。思わず「何やってるの!?」と言いたくなる治療法は、おしっこ、ヒル、頭にドリルにはとどまらない。
現代は抗生物質を飲んで治す、百日ぜき。もちろん抗生物質なんてものはなかった中世のイングランドでは、百日ぜきの治療に、何を使っていたかわかるだろうか?
正解は、ネズミ。当時の人々の生活環境にうじゃうじゃいた、小さな害獣だ。百日ぜきの患者は、野ネズミの皮をはぎ、パイに入れて焼いて食べるよう言われたそうだ。はいだ皮は9日間のどのまわりに巻いた。ネズミがせきを治すだなんて、いったいどこから思いついたのだろうか。現代人には見当もつかない。
昔の骨折の治療(?)もなかなか衝撃的だ。ひどい骨折だと、骨を元通りにつなぐのではなく、手や足など折った部分を、まるごとのこぎりで切断してしまうことが多かったそうだ。
しかも、麻酔薬が開発されたのは1850年代。それまでの手術では、患者は痛み止めの植物やアルコールを与えられることはあっても、麻酔がないので信じられないほどの痛みを感じた。手術でのショック死や失血死も当たり前だったそうだ。
今となっては想像したくもない、トンデモ医療の数々。しかし、まるっきり的外れなものばかりでもない。たとえば、血を吸う生き物のヒルは、現代でも医療に使われている。ヒルが血を吸うと、血管を膨張させる物質と血液が固まるのを防ぐ物質が注入されて、血液が流れるままになる。このはたらきは、とれてしまった耳や指を再びくっつける手術で、血液をずっと流れるようにするために使われているのだ。
おしっこ、ヒル、頭にドリル。毒、血液、いんちき薬。うんち、ミイラ、電気ショック。人は、あらゆるものを使って病気を治そうとしてきた。どれもどぎつい治療法だが、子供向けのやさしい解説、それからアン・ウィルソンさんの味のあるイラストのおかげで、ちょっと肩の力を抜いて読める。
次々と出てくる理解を超えた治療法に、驚き、呆れ、ひっくり返ったあとは、誰でもきっとこうなることだろう。
この本を読んだあとに、清潔で近代的でかん者にやさしい病院に行ったり、そこで手術を受けたりしたら、「なんて自分は運がいいんだ!」って思うだろうね。
(本文より)
■クライブ・ギフォードさんプロフィール
これまで200冊以上の本を出版し、王立協会、学校図書館協会、スミソニアン、TESなどの賞にノミネートされ、受賞もしている。「The Colors of History(QED)」でBlue Peter Book Award for Best Book with Facts 2019を受賞。イギリスのマンチェスター在住。
■アン・ウィルソンさんプロフィール
イラストレーションの修士号を取得し、イラストレーターとして15年以上活動している。作品の多くは、日常生活、パターン、色、形からインスピレーションを得ている。南大西洋のアセンション島生まれで、現在は人里離れたイギリスのレディングの町に在住。
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