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「不倫」を扱った小説3選。28歳主婦が12歳少年と...!?

眠れるラプンツェル

 読書の楽しみの1つは、極上の疑似体験ができることだろう。自分では実行しづらいけど興味をそそられるもの。「不倫」はその代表格かもしれない。

 タブー視されているけど、ひそかに「不倫」願望がある。ニュースでもドラマでも、「不倫」の2文字を見たらチェックせずにはいられない......という人は少なくないだろう。

 そこで今回は、「不倫」を扱った小説3作を紹介。刊行から年数が経過したものの中に、ハマる名作が潜んでいるかもしれない。

塔に閉じこめられた主婦

 1作目は、山本文緒さんの『眠れるラプンツェル』。1998年に幻冬舎より、2006年にKADOKAWAより文庫で刊行された。


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山本文緒さんの『眠れるラプンツェル』(角川文庫)

 主婦というよろいをまとい、ラプンツェルのように塔に閉じこめられた私――。

 「『暇ですなあ』そう呟いてみる。そしてひとりで笑った。昨日も暇だった。そして今日も暇である。明日もたぶん暇だろう」

 汐美は結婚6年目、28歳の専業主婦。多忙な夫はほとんど家に帰らない。子供はいない。「退屈でしょう」と言う人もいるが、汐美は「退屈でない生活など、考えただけでもぞっとする」タイプの人間だった。

 この平和で呑気な毎日にある日、猫が、そしてマンションの隣室の少年が入り込んできて、汐美の中で何かが崩れ始めた。汐美は勝手に、少年のことをルフィオと呼んでいた。

 「私はルフィオに好感を持っている。廊下ですれ違えばお互い頭ぐらいは下げるが、私はルフィオと話したことはない。彼の方も隣の家に住んでいる主婦になんか興味はないだろう」

 封印したはずの衝動。28歳の主婦と12歳の少年、2人だけの秘密。嘘は次第に周囲を巻き込んで......。平凡な主婦の暮らしが一変する様を、ドラマチックに描いた傑作恋愛小説。

 「十六歳も違うのかと私は思った。彼が生まれた時、私は高校一年生だったのだ。ぎりぎりではあるけれど、親子にもなれる歳の差だ」

 まさか相手が12歳とは驚いた。汐美に自分を重ねて読んで、興味も共感も止まらない。個人的にかなりツボだった。

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 先日発表された山本さんの突然の訃報には、大きなショックを受けた。残された作品の数々を、大切に読ませていただきたいと思う。

お互いの瞳は、勘違いを許した

 2作目は、山田詠美さんの『A2Z』。2000年に講談社より単行本として刊行され、03年に文庫化された。


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山田詠美さんの『A2Z』(講談社文庫)

 男の部屋に通い始めることは、記憶に新たなマップを刻むこと――。

 「私が、今、感じているこの思い。それは、たった二十六文字で表記出来る程度のものなのだと、ただ溜息をついてしまいたい」

 編集者の夏美と郵便局員の成生は、会社の向い側にある小さな郵便局で出会い、恋に落ちた。夏美は成生より「十年余分に」生きている。

 「それを出会いと呼んじゃいけない? だって、目が合ったことだし。そして、お互いの瞳は、勘違いを許したことだし」

 夫が愛人の存在を白状した。夏美は呆気に取られ、泣き、うろたえ、弱り、こう思った。

 「男の浮気ってのは、男のためだけの言い訳用語ではない。実は、された女にも必要だったんじゃないか。ことを軽く見せるための方便だったのだ」

 夫への複雑な思い、夏美に心を寄せる新人作家との仕事への情熱......。AからZまでのたった26文字にこめられた、大人の恋のすべて。読売文学賞受賞作。

 目が合っただけで恋が始まるとは、なんとも羨ましい。切なくも軽やかな文体は、刊行から20年以上を経ても現代的な印象を受けた。

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いろんな事情で女のいない男たち

 3作目は、村上春樹さんの『女のいない男たち』。第74回カンヌ国際映画祭脚本賞ほか4冠を達成した映画「ドライブ・マイ・カー」の原作を含む6編を収録。2014年に文藝春秋より単行本として刊行され、16年に文庫化された。


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村上春樹さんの『女のいない男たち』(文春文庫)

 本作のモチーフは、文字通り「女のいない男たち」。それは「いろんな事情で女性に去られてしまった男たち、あるいは去られようとしている男たち」。「いろんな事情」には、妻の不倫も含まれている。

 6編のうち「独立器官」の主人公は、妻に浮気された夫ではなく、妻の浮気相手の男。浮気相手の心理をここまで読ませる作品も珍しいなと思い読んでいると......。男は思いもよらず「うっかり落とし穴」に落ちた。

 書評「村上春樹が『心のどこかで求めていた』物語たち。結末に残る謎も...。」はこちら

 刊行年にかかわらず、気になるテーマの作品を探して読むのも面白い。過去の名作を発掘することもまた、読書の楽しみの1つと言える。


※画像提供:KADOKAWA、講談社、文藝春秋


   
  • 書名 眠れるラプンツェル
  • 監修・編集・著者名山本 文緒 著
  • 出版社名株式会社KADOKAWA
  • 出版年月日2006年6月24日
  • 定価660円(税込)
  • 判型・ページ数文庫判・304ページ
  • ISBN9784041970133

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