「漢字が読めない総理大臣」を巡るドタバタ劇で、2015年にはドラマ化もされ、人気を博した『民王』(たみおう)。武藤泰山総理とバカ息子の翔が、新たな危機に立ち向かう。
『下町ロケット』「半沢直樹シリーズ」で知られる池井戸潤さんの最新作『民王 シベリアの陰謀』(KADOKAWA)は、「民王」シリーズ第2作。今作で泰山と翔が挑むのは、人を凶暴化させる「謎のウイルス」だ。前作『民王』から約11年。コロナ禍となった日本に今だからこそ届けたい、痛快政治風刺コメディーである。
「マドンナ・ウイルス? なんじゃそりゃ」
第二次内閣を発足させたばかりの武藤泰山。内閣の目玉として指名した、「マドンナ」こと高西麗子環境大臣が、パーティの最中に突然暴れ出した。原因は謎のウイルス。同じ時、泰山の息子・翔も、仕事で訪れた大学の研究室で「狼男化」した教授に襲われていた。人を凶暴化させるこのウイルスは、感染が急速に拡大。泰山は緊急事態宣言を発令して収束を図るが、世論は逆風となって政府を襲う。さらに、国民の間では陰謀論者が台頭。泰山と翔、そして秘書の貝原が、内閣と国家の危機に立ち向かう。
今作のキーワードは3つ。「ウイルス」、「温暖化」、そして「陰謀論」だ。著者の池井戸さん自身がKADOKAWAのカドブン特設サイトで、それぞれのキーワードについて語っている。
ここ数年、トランプ政権末期のQアノンをはじめとして、陰謀論が世界中で猛威を振るっていますよね。年明けにアメリカの連邦議会議事堂にデモ隊が乱入する事件が起こったときは、本当に衝撃を受けました。あの人たちは、選挙は不正だったと本気で信じているわけでしょう? その後、アメリカだけでなく日本でもさまざまな陰謀論が流布し始めて、しかも学者や財界人など、学があって社会的立場の高い人までがそれを広めている。遊びでやっているのかと思っていたら、どうやら本気で信じているらしいということが見えてきて、「なぜ人は陰謀論を信じてしまうのか」ということが、自分の中で大きな疑問として湧き上がりました。(カドブン『民王 シベリアの陰謀』特設サイト 刊行記念インタビューより)
前作『民王』は、国会答弁の漢字を誤読する政治家を見て、「総理大臣ともあろう人間が、なぜ漢字を読めないのか」という疑問が湧いたことから構想が始まった。「陰謀論」は、そんな前作の疑問に匹敵するほどの強い動機だったそうだ。陰謀論がはびこる世の中に隠された、「国家を揺るがす真実」に気づいてしまい、作家としてこれを書かねば! と決意したと語る池井戸さん。明かされた真実とは一体何なのか、ぜひ『民王 シベリアの陰謀』を読んで確かめていただきたい。
「各所への失礼発言満載の抱腹絶倒ギャグ風刺政治小説です。決して真面目な小説ではありません。」
この小説をそう評するのは、ドラマ「民王」のプロデューサー・飯田サヤカさんだ。前作『民王』は、未曽有を「みぞうゆう」と読む総理大臣、本質から外れっぱなしの政治論争を、悪戯心たっぷりのギャグで痛烈に風刺した作品。飯田さんはそんな『民王』の辛口を生かし、「怒られ上等」でドラマを作ったそうだ。そして、当時の「怒られ上等」は、第2作にもそのまま受け継がれている。コロナウイルスや陰謀論で揺れる現代に、池井戸さんが投じた"抱腹絶倒"の一石とは。泰山・翔とともに、この時代を笑って飛び越えよう。
なお、第1作目の『民王』は、角川文庫になっている。
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