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半沢直樹が銀行マンの原点に戻った!/『半沢直樹 アルルカンと道化師』池井戸潤インタビュー(1)

 テレビドラマ「半沢直樹」(TBS系)のセカンドシーズンが始まり、高視聴率を記録している。

 作家・池井戸潤さんの原作。『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』から続く「半沢直樹」シリーズは、9月17日に新刊『半沢直樹 アルルカンと道化師』(講談社)が発売される。

 自身最多のシリーズ5作目は、コロナ禍の今年春に執筆された。新作に込めた思いや「半沢直樹」シリーズについて、池井戸さんに聞いた。

写真は、新作「アルルカンと道化師」について語る池井戸潤さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)
写真は、新作「アルルカンと道化師」について語る池井戸潤さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)

―― 本作は、「半沢直樹」シリーズの前日譚という位置づけだそうですが、執筆のきっかけは?

池井戸 最初は、半沢直樹の盟友である渡真利忍を主人公にした中編を準備していました。自分が納得するレベルに達しなかったのでボツにしたのですが、半沢直樹を主人公にして書き直したのが本作です。

 「半沢直樹」シリーズは、第1作『オレたちバブル入行組』と第2作『オレたち花のバブル組』では融資現場での戦いを描いています。しかし、第3作『ロスジェネの逆襲』と第4作『銀翼のイカロス』では戦う相手を大きくした結果、等身大の銀行員目線からかけ離れてしまったのが気になっていました。

 そこで今回は、原点に立ち戻り、中小零細企業を取引相手にする銀行員としての卑近な戦いを描きたいと考えました。半沢年表のどこに入れようかと思案し、シリーズ一作目の直前という設定にして、半沢の肩書きも「融資課長」に戻しました。ちっぽけな存在だからこそ描ける身近な物語になったと思います。

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『半沢直樹 3 ロスジェネの逆襲』と『半沢直樹 4 銀翼のイカロス』(写真提供:講談社)

池井戸さんも同じ大阪の銀行に勤めていた!

―― 東京中央銀行の大阪西支店が舞台になっています。池井戸さんは、以前銀行にお勤めと伺っておりますが、大阪に勤務されたことはありましたか?

池井戸 大阪には3年半勤めていました。取引先との関係も大阪はつながりが強いというか、人情味があったように思います。そういう地域性があったのかもしれません。

写真は、新作「アルルカンと道化師」について語る池井戸潤さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)
写真は、新作「アルルカンと道化師」について語る池井戸潤さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)

―― 今回は、関西の老舗美術出版社への融資をめぐり、融資課長である半沢が活躍します。美術・絵画をテーマにした理由は?

池井戸 ある編集者がくださった画集に、アンドレ・ドランが描いた「アルルカンとピエロ」という絵が載っていて、それがとても印象的だったのです。新たな半沢直樹の物語をあれこれ考えているうち、この絵画を道具立てとし、ミステリ的なアプローチで書いてみたらどうなるだろうという冒険心が生まれ、本作の執筆につながりました。

画像は、『半沢直樹 アルルカンと道化師』(池井戸潤 著、講談社)
画像は、『半沢直樹 アルルカンと道化師』(池井戸潤 著、講談社)

―― いままでになくミステリ色の強い作品になったように思いましたが、いかがでしょうか。

池井戸 私は江戸川乱歩賞でデビューしたミステリ作家です。これまでの作品も、舞台は大企業だったり、町の中小企業だったりするものの、実は一貫してサスペンスの手法で書いてきました。今回もそうした構成と軌を一にしており、書いていてまったく違和感はありませんでした。とはいえ「半沢直樹」シリーズの真骨頂はやはり組織内の戦いで、本作でもそこは変わりません。いままで通り楽しんでいただけるものと考えています。

友人のような「半沢直樹」シリーズ

―― 本作の読みどころは?

池井戸 融資課長として部下を守りながらも、銀行という巨大組織の上層部による横暴と理不尽に敢然と立ち向かう半沢直樹の戦いっぷりです。また浅野支店長や江島副支店長といった直属上司たちとの戦いにもご注目いただければ、と思っています。

―― 池井戸さんにとって「半沢直樹」シリーズはどんな存在ですか?

池井戸 いちばん縁(えにし)のある作品です。友人のようなシリーズと言ってもいいかもしれない。銀行が舞台の明るく痛快な物語を書いてみたいと思っていました。さいわい評判になりましたが、3作目、4作目で少しスケールを大きくしすぎたかな、と。


(第2回につづく)

※第2回「ドラマは一視聴者として楽しんでいます/『半沢直樹 アルルカンと道化師』池井戸潤インタビュー(2)」は9月6日公開予定。


写真は、新作「アルルカンと道化師」について語る池井戸潤さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)

池井戸潤(いけいど じゅん)

 1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。'98年『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2010年『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞、2011年『下町ロケット』で直木賞を受賞。主な著書に「半沢直樹」シリーズ、「下町ロケット」シリーズ、「花咲舞」シリーズ、『空飛ぶタイヤ』『ルーズヴェルト・ゲーム』『七つの会議』『陸王』『民王』『アキラとあきら』『ノーサイド・ゲーム』などがある。最新刊は『半沢直樹 アルルカンと道化師』。



             

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