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それでも「ニュース」を創りたい人へ。気鋭のノンフィクションライターが東大講義を書籍化

ニュースの未来

 ニュースに未来はあるのか?

 気鋭のノンフィクションライター・石戸論(いしど さとる)さんの新刊、『ニュースの未来』(光文社新書)は、今、メディア業界に属する人々が共通して抱いている疑問や不安にこたえ、新時代の報道の在り方を問うメディア論だ。

新聞、ネットメディアを経験

 石戸さんは1984年生まれ。2006年に毎日新聞社に入社し、岡山県で新人記者生活を送った。その後、同社の大阪社会部やデジタル部門などを経て、2016年にネットメディア・Buzzfeed Japanに移籍。2018年に独立し、現在はフリーのノンフィクションライターとして活躍している。

 2019年には、作家の百田尚樹さんの実像に迫ったルポルタージュ『ルポ 百田尚樹現象』を「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)で執筆し、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞2020作品賞」を受賞した。「AbemaTV」にもコメンテーターとしてたびたび出演しているほか、『リスクと生きる 死者と生きる』(亜紀書房)などの著書もある。

 本書は、石戸さんが東京大学大学院情報学環境育部で非常勤講師として2年間担当していた講義をベースにまとめたもの。「第1章 ノーベル文学賞作家とフェイクニュース」から始まり、「第2章 インターネット時代のニュースとは何か」「第3章 『良いニュース』の五大要素」など、新時代に求められるメディア像とは何かを考察していく。

良いニュースには5つの要素がある

 第3章で石戸さんは、「良いニュース」とは「事実に基づき、社会的なイシュー(論点、争点)について、読んだ人に新しい気付きを与え、かつ読まれるもの」と定義づけたうえで、それには以下の5つの要素が含まれているという。

①良いニュースには「謎」がある
②良いニュースには「驚き」がある
③良いニュースには「批評」がある
④良いニュースには「個性」がある
⑤良いニュースには「思考」がある

 ①と②はそれぞれ、読者の興味をひく「問い」を立て、納得のいく答えを提示していること、③と④は、書き手の独自の視点や価値観が表現されていることが条件として挙げられている。

 そして、石戸さんが最も紙幅を割いているのが⑤だ。石戸さんは、思考には直感的かつ感情的な「速い思考」と、理性的、論理的に考える「遅い思考」の2種類があり、今ネット上にあふれているのは前者の喜怒哀楽といった感情を刺激するニュースだと指摘する。そしてそれは時に、人々の間に分断を生むリスクをはらんでいる、とも。

「(略)だからこそ大事になってくるのは、遅い思考とも歩調を合わせられるニュース、感情を刺激して終わらないニュースとは何かを考えることです。」

 本書では著者自身が過去に執筆した記事を含め、多くの事例とデータをもとに「良いニュース」とは何かを掘り下げ、作り手は何をすべきかを提示している。

 石戸さんは終章でこう綴る。

「今、ニュースの世界は希望がほとんどないように見えます。[中略]こうした状況であっても、否、こうした状況であるからこそ、少しでも新しいものを生み出したいという発信者がニュースの歴史に連なり、挑戦を欠かさない実践によって未来を切り開き、次の時代のニュースを『創造』していくバトンを受け取るのです」

 ニュースに携わっている人、これからニュースにかかわりたいと思っている人に、おすすめの一冊。


 
  • 書名 ニュースの未来
  • 監修・編集・著者名石戸諭 著
  • 出版社名光文社
  • 出版年月日2021年8月18日
  • 定価860円+税
  • 判型・ページ数新書判・288ページ
  • ISBN9784334045593

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