「叶うなら、あなたがイジメに遭う前のあの時に戻りたい。そして、あなたをもう一度思いっきり抱きしめてあげたい。」
北海道旭川市の中学校で起きたイジメ事件の被害者、廣瀬爽彩(さあや)さんの母親の悲痛な叫びに胸をえぐられる。
文春オンライン特集班が同事件のスクープ報道を1冊にまとめた『娘の遺体は凍っていた』(文藝春秋)が、9月10日に発売された。冒頭の言葉は、巻末に収録された爽彩さんの母親の手記に綴られている。
2019年4月、地元のY中学に通うようになってすぐ、爽彩さんは近隣の小中学生から性的な辱めを受け、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した。転校後もトラウマに苦しめられ、2021年2月に失踪し、1か月以上たった3月23日に遺体となって発見された。
その3日後、「文春オンライン」編集部のツイッターに、爽彩さんの母親の支援者から、「彼女の死について調べてほしい」というダイレクトメッセージが届いた。同編集部では約2週間かけて、友人や支援者、学校関係者、近隣住人などにあたり、多くの証言と物証を積み重ね、何が起きたのかを明らかにしていった。そして分かったのは、「イジメ」の域を超えた恐ろしい事実だった――。
イジメの実態や不可解な学校の対応、遺族・加害者・関係者に徹底取材した文春オンラインの報道は全国的な反響を呼び、第三者委員会の再調査が決定した。本書には、その一部始終が同時進行ドキュメントの形式でつぶさに記録されている。
また、資料として、大荒れとなった中学校の臨時保護者会の全文を公開。爽彩さんが在校していた当時の校長は不在のまま、「第三者委員会による調査で検討される」「今ここで即答できない」を繰り返す学校側に、保護者が「子どもたちにどう説明すればいいのか?」と不信感をあらわにする様子がわかる。
幼いころから絵を描くことが好きで、活発な少女だったという爽彩さん。母親は、「爽彩が14年間生きてきた証を1人でも多くの方に知ってほしい」と、爽彩さんの実名と写真を掲載することを許可したという。
「爽彩は簡単に死を選んだわけではありません。名前と写真を出すことで、爽彩がイジメと懸命に闘った現実を多くの人に知ってほしい。」
本書の内容は以下の通りだ。
遺体は凍っていた/凄惨なイジメの実態/少女は川へ飛び込んだ/加害者たちが語ったこと/中学校はどう対応したか/「イジメはなかった」当時の校長を直撃/第三者委員会による再調査が決定/爽彩さんがネットの友人たちに相談していたこと/大荒れとなった保護者説明会/拡散するデマ、逮捕者も出た迷惑ユーチューバー/第三者委員会のメンバー候補への疑問/市議会で相次いだ事件への質問/「死体検案所」は語る/隠蔽体質の教育委員会は解散せよ――尾木ママの直言/〔資料〕全文公開 Y中学臨時保護者会/母の手記「爽彩へ」(目次より)
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