現代まで受け継がれる文豪の作品と、人気イラストレーターがコラボする「乙女の本棚シリーズ」(立東舎)に、谷崎潤一郎の名著『刺青』が登場した。イラストを担当したのは、夜汽車さんである。
「乙女の本棚」シリーズは、近代を中心とした文豪の名作に、現在の人気イラストレーターが自由な感性を生かしてイラストを美しく添えたもの。小説としてだけではなく、イラストを絵本感覚で楽しむこともできることから、人気が高いコラボレーションシリーズである。
シリーズ第21弾は、耽美派として多くの読者を虜にしてきた谷崎潤一郎の作品の中でも特に人気のある『刺青』をテーマに、幅広いジャンルを描きこなす実力派の夜汽車さんがイラストを描き下ろした。オールカラーで小説を視覚的に味わえる。
「刺青」のあらすじは以下の通り。
刺青師である清吉には密かな野望があった。それは、理想の美女の素肌に己の魂を彫り込むことだ。そんな願望を長年抱いていたが、理想とする美女は江戸中を探しても見つからなかった。そんなある夏の日、ふと見かけたのは、料理屋の前で籠の隙間から覗く白くて美しい女の素足だった。この女こそ自分が追い求めてきた理想の女だと確信し、清吉はその籠を追いかけるが、見失ってしまう。しかし翌年の春、清吉のもとに、あの女が現れた――。
「お前さんの命を貰った代りに、私はさぞ美しくなったろうねえ」
そんな台詞に背筋がゾクっとする。夜汽車さんの美しいイラストが、作品の世界を幻想的に彩っている。
夜汽車さんは、少女を描くことと、19世紀末の挿絵画家を好むイラストレーター。目標にしているのは、昔懐かしいような落ち着いた雰囲気で、『夜長姫と耳男』(坂口安吾+夜汽車)、『おとぎ古書店の幻想装画』、『Illustration Making & Visual Book 夜汽車』などの著書がある。
夜汽車さんは、本書の発売によせて次のようにコメントしている。
美女の肌に魂を彫り込みたいという願いを持った清吉という若い天才刺青師のお話です。 冒頭の絢爛豪華な描写から、いびつさを感じる描写など、私自身の作風とかけ合わせながら多彩に詰め込むようにしました。甘美で濃厚な世界観を愉しんでいただけましたら幸いです。
「乙女の本棚シリーズ」は本作を含め『夜長姫と耳男』(坂口安吾+夜汽車)、『秘密』(谷崎 潤一郎+マツオ ヒロミ)、『魚服記』(太宰治+ねこ助)、『春は馬車に乗って』(横光利一+いとうあつき)、『人間椅子』(江戸川乱歩+ホノジロトヲジ)、『山月記』(中島敦+ねこ助)、『夢十夜』(夏目漱石+しきみ)、『蜜柑』(芥川龍之介+げみ)、『檸檬』(梶井基次郎+げみ)など全21作品が発売されている。
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