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不妊治療、養子縁組、子どもを持たない――それぞれの決断と勇気のストーリー集

子どもを迎えるまでの物語

   精神的にも経済的にも負担の大きい不妊治療。周囲の人にはもちろん、当事者同士でさえ、治療のステージや、一人目か二人目か、家庭の経済状況などによって立場は異なり、互いに気を遣う。苦しみを共有したくても、パートナー以外に悩みを話せる相手がなかなかいないことも辛い。

   子どもを迎えるには、不妊治療のほか、里親や特別養子縁組などの選択肢もある。また、葛藤の末に「子どもを持たない」決断をする人もいるだろう。

   2021年6月16日『子どもを迎えるまでの物語 生殖、不妊治療、親になる選択』(サウザンブックス社)が発売される。

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   本書は、著者のボグスさんをはじめとする、様々な人々の「子どもを迎えるまでの物語」を描いたノンフィクションエッセイだ。著者が妊活を始めてから、体外受精による妊娠・出産にいたるまでの5年間に経験した個人の物語、そして、不妊治療や養子縁組について調べる中で、著者が出会った人々の出産や養子を迎えるまでの話が丁寧に綴られている。

   本書で紹介される物語には、人工授精、体外受精、里親、特別養子縁組で子どもを迎えた人々や、子どもをもたないことを選んだ人々が登場する。また、ヘテロセクシュアルやLGBTQ+コミュニティの人も、カップルも、シングルペアレントの人もいる。同性愛の法制化が期待される日本においても、家族の持ち方の選択肢について考えるきっかけをくれる。

   そして、不妊に対する「偏見」、そこから来る「劣等感」に「打ち明けにくさ」という悩みの根本を突き詰める。子どもがいない人々の静かな悩みや、迎えないことを選んだ人々と社会との関わり方について、これまでどのように扱われてきたかなども克明に記されている。

   本書で紹介している物語は以下の通り。

ベルの場合
著者。三度の人工授精を経て、体外受精治療への移行を医師に勧められる。
迷いながらも、体外受精に踏み切るまでのなかで、なぜ自分がこれほどまでに自らの子を渇望するのかを知るために、文化的なすりこみなどの背景や、医学的な根拠などを丹念にリサーチしながら、特別養子縁組を経て親になった人たちや、代理母を模索する人たち、子どもを持たないことを選んだ人たちと出会い、話を聞く。

ネイトとパルルの場合
不妊治療に何年もとりくみ、6回の流産を経て米国内で養子を迎える。米国の民間の養子縁組エージェンシーを通し、養子縁組希望を登録して数週間後に急遽女児を家族に迎えることになる。州の法律によって出生後の実母がやはり子どもを引き取りたいなど気持ちを変えるまで、24時間のみ与えられているユタ州のエージェンシーを通したため、出産の知らせを受け、急いで他州へと飛び立った。ビジネスライクなエージェンシーのプロセスに疑問を抱いた二人は、国内の養子縁組について啓蒙と支援を行うグループを立ち上げる。

マークとレイチェルの場合
HIV/AIDSで親を亡くしたという4歳の男の子をエチオピアから国際養子縁組で迎える。現地に息子を迎えに行く際に、息子の親戚にも顔を合わせるものの、帰国後、息子と家族になった過程の話をするなかで、息子に「親は死んでいない」と言われてしまう。言葉が通じず通訳を介するしかないエチオピアでは、出生証明書や死亡証明書などもない。二人の話を通して国際養子縁組の不透明な部分も指摘されている。

ウィリス・リンチの話
1948年、当時14歳だったウィリスは、優生保護法によって「子どもを持つには不適」とされ、住んでいた州立の児童養護施設から近隣の病院にうつされ、強制的に去勢手術を受けさせられる。州に対して賠償金を求める活動を行うほか、講演などを行う。

メッカ・ジャマイラ・サリバンの場合
米国人作家。強い女性主人公の登場する小説を書く。「人生で色々なものが欲しいけれど、今は子どもは欲しくない」と公言する。Childless(子なし)やChildfree (子どもを持つことから解放されている)などの表現をどう思うか尋ねられ「子どもがいたとしても、女性や作家と言われる方が良い」と言う。

ホリー・ブロックウェルの場合
英国人作家。29歳当時、自ら避妊を希望するも、英国の国民保険サービスの登録医師たちに手術を4度拒否され、英国内で物議をかもした。「子どもを産み育てるには十分大人だと言われるのに、子どもを持たないという決断をするには若すぎると言われた」として、ダブルスタンダードを指摘する。

ゲイブとトッドの場合
ゲイカップルの二人は結婚後一年を経て、子どもを迎えることを決意する。代理母を選びながらも、国際的な代理母出産ビジネスにまつわる母体へのリスク、依頼主と代理母の経済的なパワーバランスなどに葛藤する。

マーガレットの場合
9回の体外受精治療と7回の流産を経て、妊娠する。38歳で不妊治療開始当時住んでいたNY州では、不妊治療の適用ケースや範囲が限られていて、多額の治療費への負担が強いられた。その後、転職で引っ越した先のマサチューセッツ州の医療保険では、不妊治療の医療保険適用範囲が広く、高額な不妊治療を続けることが可能となった。42歳で自身の卵子での体外受精に成功する。

カンダスの場合
イタリア系米国人の夫を持つ、アフリカ系米国人女性。白人やアジア人のドナー卵子数にくらべアフリカ系の選択肢が非常に限られていたことを指摘する。

   本書は、様々なケースを示すことで、子どもを望むあらゆる人々に、「一人じゃない」「選択肢がある」と寄り添ってくれる。これまで語られることがなかった一人ひとりの物語に触れてみるのはいかがだろうか。


※画像提供:サウザンブックス社

  • 書名 子どもを迎えるまでの物語
  • サブタイトル生殖、不妊治療、親になる選択
  • 監修・編集・著者名ベル・ボグス 著/文 、石渡 悠起子 訳
  • 出版社名サウザンブックス社
  • 出版年月日2021年6月16日
  • 定価2,310円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・352ページ
  • ISBN9784909125279

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