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3分で必ずだまされる。予測不能のどんでん返し16作品

1話3分で驚きの結末! 大どんでん返しの物語

 昨年10月、新川帆立さんの『元彼の遺言状』が第19回『このミステリーがすごい!』大賞に選ばれた。同書は全国書店で続々1位となり、たちまち20万部を突破。各メディアが取り上げるほどの話題書となった。

 そんな注目度の高い『このミステリーがすごい!』の編集部による本書『1話3分で驚きの結末! 大どんでん返しの物語』(宝島社)は、ミステリー好き、ショートショート好きにはたまらない1冊。

 本書は『このミステリーがすごい!』大賞作家をはじめ、人気作家たちが競う累計91万部を突破した「宝島社のショートショートシリーズ」から、3分で読める驚きの物語を集めた傑作選となっている。

 「1行でゾッとする怖い話から、最後の1ページで泣ける物語まで。3分で必ずだまされる、ショートショート傑作選!」

衝撃のどんでん返し

 「響け! ユーフォニアム」シリーズの武田綾乃さん、「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズの岡崎琢磨さん、「さよならドビュッシー」シリーズの中山七里さんなど、人気作家が贈る衝撃のどんでん返し、16作品を収録。

 本書の収録作品はいずれも、たとえば『5分で読める! ひと駅ストーリー 冬の記憶・西口編』『3分で読める! コーヒーブレイクに読む喫茶店の物語』『5分で読める! ひと駅ストーリー 旅の話』など、過去に刊行された宝島社文庫に収録されたもの。

 また、1話あたりの長さは12ページほど。3分で驚きの結末までたどり着けるかは、読書スピードによるだろう。個人的にはもう少し時間がかかった。ただ、「ショートショート」「大どんでん返し」をテーマに編集された本書は、途中で飽きる暇もなく、終始楽しませてくれることは間違いない。

■目次

・ぼくが飼い始めた、一人ぼっちのあの子。かわいそうなうさぎ 武田綾乃
・大好きな彼との、最後の時――。フレンチプレスといくつかの嘘 岡崎琢磨
・旅行中に出会ったのは、危険なイケメン!? 卒業旅行ジャック 篠原昌裕
・神保町の喫茶店。名物は裏メニューの、珈琲占い 志駕晃
・喧嘩ばかりだったあいつとの、約束。二本早い電車で。 森川楓子
・結婚式直前。父が思い出すのは......。父のスピーチ 喜多喜久
・定年を迎える父は、息子に決意を伝える。定年 塔山郁
・いつか、彼と一緒になれますように――。祈り捧げる 林由美子
・大ベストセラー作家が抱える、切実な悩みとは? ある人気作家の憂鬱 島津緒繰
・私たちは運命共同体。協力して幸せをつかむのだ! 婚活ドリームチーム 柊サナカ
・おやおや、私の話が聞きたいですって? 闇の世界の証言者 深津十一
・俺が好きな人には、好きな人がいる。夏祭りのリンゴ飴は甘くて酸っぱい味がする 堀内公太郎
・あなたの大好物、やっぱり美味しいでしょ? 私のカレーライス 佐藤青南
・病気の妻はこの頃、昔の話ばかりをする。柿 友井羊
・世は全裸時代!? 異色の刑事、大活躍! 全裸刑事チャーリー 衝撃! 股間グラビア殺人事件 七尾与史
・夫を焼死させたと自供する妻。和尚の推理は? 盆帰り 中山七里

「かわいそうなうさぎ」

 ここでは2作品紹介しよう。まず、本書のトップバッターを飾る武田綾乃さんの「かわいそうなうさぎ」。

 小学生のぼくはうさぎを飼っていた。それは、ぼくが通っていた保育園で産まれたうさぎだった。うさぎの数が多すぎて、そこではあまり長生きできないと聞いたぼくは、パパとママに内緒でうさぎを飼うことにした。

 「かわいそうなぼくのうさぎ。誰にも必要とされないで。(中略)目の前の小さな小さな生き物が、ぼくにはとても愛おしく思えた」

 ぼくはうさぎを隠し続けた。ところがある日、妹にバレた。もうおしまいかと思ったら、妹もうさぎを気に入り、パパとママは飼うことを許してくれた。「お家を買ってあげなきゃ。リビングでみんなでお世話しようね」。

 ほっこりする家族団らんの場面が思い浮かんだ矢先、ぼくはゾッとする行動に出る――。最後の5行でガラリと空気が一転し、そのどんでん返しぶりが強烈だった。

「二本早い電車で。」

 もう1つは、森川楓子さんの「二本早い電車で。」。

 「あの事故から、もうそろそろ十年ですねえ」。ふいに、そんな声が耳に飛び込んできた。そう、まさに10年前の今日、あの悲惨な鉄道事故は起きた。私は今も、あの日のことを鮮明に覚えている。

 10年前、私はこの路線で高校に通学していた。中学時代に喧嘩ばかりしていたヨシノブも、同じ路線で別の高校に通学していた。ある夕方、突然ヨシノブから電話がかかってきた。

 「おまえ、いつも何時の電車に乗ってんの?」
 「はあ? 七時十二分だけど」
 「明日、それより二本早い電車に乗れよ」
 「はあ? なんで?」
 「なんでもいいだろ。そんで、進行方向右側の窓、見てみろ」

 私は首をかしげつつ、ともかく、翌朝はいつもより2本早い電車に乗った――。「驚きの結末」といっても、ゾッとするわけではなく、なんとも切ない余韻が残り、記憶に残った。

 本書は、いろいろな作家の作品を一気読みしたい人、刺激的な読書体験を求めている人にピッタリの1冊。さて、あなたは3分で必ずだまされるだろうか? 



 


  • 書名 1話3分で驚きの結末! 大どんでん返しの物語
  • 監修・編集・著者名『このミステリーがすごい!』編集部 編
  • 出版社名宝島社
  • 出版年月日2021年3月25日
  • 定価1100円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・208ページ
  • ISBN9784299014825

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