人気ドラマ「俺の家の話」(TBS系)で、長瀬智也さんや桐谷健太さんら、ごっつい俳優が能を舞う姿は新鮮だ。また、NHK大河ドラマ「青天を衝け」では、草なぎ剛さん扮する徳川慶喜が能を舞うシーンがあり、能楽がひそかに注目を集めている。
2021年3月23日に発売された『能から紐解く日本史』(扶桑社)では、700年近く日本人と歩み続けた伝統文化、能楽の世界を歴史とのかかわりから紐解いていく。
著者は小鼓方の能楽師・大倉源次郎さんだ。1957年、大倉流十五世宗家・大倉長十郎の次男として大阪に生まれ、85年に能楽小鼓方大倉流十六世宗家になった。2017年には59歳の若さで人間国宝に認定されている。現在、YouTbeで『源次郎チャンネル』を開設するなど、積極的に能楽の情報発信を行っている。
大倉さんは、舞台で小鼓を演奏しながら、いにしえの能作者が伝えたかったこと、謡曲の「詞章」に込められた意味を感じ、読み取ろうとしてきた。
本書では、能の成り立ち、演目を解読しながら、能に隠された日本史の真実を探り、能作者が現代に何を伝えたかったのかを紐解いていく。そして、「日本が日本であり続けるために」、読者が「能」と出合ったことにより、「生きた証について考え何かアクションを起こしたくなるように」という大倉さんの思いが込められている。
本書で紹介されている内容を一部紹介しよう。
『国栖』......壬申の乱で吉野山中の山岳信仰の人々が天武天皇を助けたエピソードを伝える能
『白鬚』......比叡山に仏教寺院を開こうとした際、地元の人々からの反対運動に遭った!
『花筐』......継体天皇が越前から大和入りするの何十年かかったのは、各地で最新式の稲作を根付かせながら移動したためでは?
『養老』......室町時代、世阿弥作。天皇が征夷大将軍を任命する儀式「将軍宣下」のときに上演された。おっちょこちょいでミスばかりする当時の足利将軍へ、しっかりしてほしいとの皮肉を込めた
『翁』......徳川家康が諸大名に鑑賞させた
また、本書に登場する演目は以下の通りだ。
翁・国栖・花筐・田村・白鬚・梅石橋・大江山・小鍛冶・船弁慶猩々・養老・高砂・百万・道成寺・橋弁慶・鞍馬天狗・隅田川・桜川・鵺・岩船・融・海士・紅葉狩・砧姨捨・夜討曽我・清経・経正・巴・金札・小袖曽我・現在七面・井筒・夕顔・芭蕉・菅丞相・卒都婆小町・葵上 ほか
能の初心者にもわかりやすいように演奏動画がついている。本を読みながら、演目の一部を鑑賞できる。
能というと特別で敷居が高いと思っていた人も多いだろう。ドラマでややハードルが下がったところで、読書を通してその世界観に触れてみてはいかがだろうか。
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