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疲れ果てた「よい子」たちへ 精神科医が説く「やさしい暴力」からの解放

 「やさしい暴力」。

 聞きなれない言葉だが、どのような光景を連想するだろうか。精神科医である斎藤学(さいとう・さとる)先生は、「子どもをおとなの都合で濫用すること」をこのように呼ぶ。

画像は、『「愛」という名のやさしい暴力』(扶桑社)
画像は、『「愛」という名のやさしい暴力』(扶桑社)

 『「愛」という名のやさしい暴力』(扶桑社)が、2020年9月23日に発売された。本書では、親から子どもへの「やさしい暴力」から解放される方法を説く。

 「虐待というのは、殴ったり蹴ったりするようなわかりやすいものだけではありません」と、斎藤先生は言う。 「子どもをおとなの都合で濫用することもまた、暴力であり、虐待です」

 たとえば、子どもを愛するがゆえに、子どもに期待して干渉する。そんな親からの「やさしい暴力」を免れている家庭のほうがむしろ、今の日本には少ないのかもしれない。

 いわゆる「よい子」ほど、生きづらさを抱えているのではないか。波風を立てず、空気を読みあって、相手の期待を裏切らないように振る舞ううちに、自分の願望や欲求を見失っているのではないか?

 本書はそう問いかけながら、不安、無力感、寂しさ、怒り、罪悪感に苦しむ人を「やさしい暴力」から解放しようとしている。以下は、本書の「はじめに」からの抜粋だ。

「自分の感情がわからなければ、当然、他者との情緒的な交流も困難になります。他者の目(評価)を極端に気にするようになるので、自分をさらけ出すことも難しく、いつでも孤独で寂しい人間になります。『自分らしい人生を豊かに生きる』ことなど、とうていできません。 子どもから『自分らしく生き生きとした人生』を奪うことは、紛れもない暴力です」
(「はじめに」より一部抜粋)

 家族問題の第一人者である斎藤先生の言葉は、きっと多くの「よい子」にとって、救いになるはずだ。

画像はいずれも、『「愛」という名のやさしい暴力』(扶桑社)より
画像はいずれも、『「愛」という名のやさしい暴力』(扶桑社)より

 本書の内容を見て、マンガ「凪のお暇(なぎのおいとま)」(コナリミサト著、秋田書店刊)を思い出した。主人公は、いつも場の空気を読むのに必死で、「わかるー」が口ぐせの大島凪28歳。19年に黒木華さん主演でドラマ化もされた"人生リセット"コメディだ。

 凪ちゃんのように生きづらさを感じているとか、子どもに期待して、知らず知らずのうちに干渉しすぎていないだろうかと不安に思ったら手に取ってみては。


※画像提供:扶桑社

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