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特攻体験――198歳の「岩井兄弟」に関わる本の出版相次ぐ

 BOOKウォッチでは2018年8月に『特攻――自殺兵器となった学徒兵兄弟の証言』(新日本出版社、岩井忠正・岩井忠熊著)を紹介したが、岩井兄弟にかかわる本の出版が相次いている。

 一つは『特攻 最後の証言――100歳・98歳の兄弟が語る』(河出書房新社)。もう一つは、『特攻と日本軍兵士――大学生から「特殊兵器」搭乗員になった兄弟の証言と伝言』(毎日新聞出版)だ。

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画像は『特攻 最後の証言――100歳・98歳の兄弟が語る』(河出書房新社)
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画像は『特攻と日本軍兵士――大学生から「特殊兵器」搭乗員になった兄弟の証言と伝言』(毎日新聞出版)

 兄の岩井忠正さんは1920年生まれ。慶応大学文学部哲学科二年生の時に徴兵猶予が停止になり海軍へ。43年10月21日、神宮外苑で行われた学徒出陣壮行会にも参加した。海軍で人間魚雷「回天」の要員になり、訓練を受けたが、肺結核の疑いをもたれ、感染が広がると困るということでメンバーから外される。その後改めて潜水特攻「伏竜」の要員に回され、訓練を受けたが、実戦に出る前に終戦を迎えた。一人で二つの特攻に関わって生き延びるという数奇な体験を持つ。戦後は商社員を経て翻訳業をしていたという。

 弟の岩井忠熊さんは1922年生まれ。京都大学文学部在学中の43年12月、横須賀第二海兵団に入団。航海術を学んだあと水上特攻艇「震洋」の要員になり、45年3月23日、五島列島から南方の出撃拠点に向かう船団で移動中、米潜水艦に襲撃される。船はわずか25秒で船尾を垂直にして轟沈。海に飛び込み3時間漂流して救助された。隊員187人のうち生き残ったのは45人。さらに訓練を続けているうちに終戦。戦後は立命館大学の教授や副学長をつとめた。『近代天皇制のイデオロギー』など多数の著書がある。

 2人は「元特攻兵 岩井兄弟からの最後の証言」と題し、2019年11月9日、早稲田大9号館5階第1会議室でトークインに参加。会場は満席になった。

 河出書房新社版は2020年7月、毎日新聞版は同8月の出版。

BOOKウォッチでは「伏竜」については、『海軍伏龍特攻隊』(光人社NF文庫)、水上特攻については『ベニヤ舟の特攻兵――8・6広島、陸軍秘密部隊レの救援作戦 』(角川新書)、空の特攻隊と水上特攻については『改訂版 つらい真実――虚構の特攻隊神話』(同成社)など関連本を多数紹介済みだ。

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