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三姉妹と三兄弟が3ペアに。「奇跡の三夫婦」を描いた実話

 本書の舞台となる大沼は、函館からほど近い自然豊かなリゾート地。明治時代に「手つかずの美しい自然に魅せられた開拓民が入った地」でもある。

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写真は、『大沼ワルツ』(小学館)

 本書のあらすじは以下のとおり。
 倉島家の母・那須子(やすこ)は15歳のとき、香川県から大沼に嫁いできた。那須子は早くに夫を亡くしたが香川へ帰ることなく、大沼の地で腹を据えて三人の息子を育てあげた。

 第二次世界大戦中の東京で、倉島家の長男は山梨から来ていた坂田家の長女と出会う。恋に落ちて結婚した二人は、終戦後に大沼で暮らしはじめる。驚くべきことに、倉島家の次男には坂田家の次女が、倉島家の三男には坂田家の三女が、その後次々と嫁いでいくのである。

 魅力的な倉島家の三兄弟と、個性あふれる坂田家の三姉妹。この「奇跡の三夫婦」はさまざまな困難に見舞われながらも、大沼の地に新風を注ぎ込んでいく。そして那須子が亡くなる際、ある謎が明かされる――。

 本書の設定は実話に基づいているという。谷村さんが函館の家のデザインを依頼した建築デザイナーが、本書に登場する長男・長女夫婦の息子だった。そこで「大沼の三兄弟に山梨の三姉妹が順に嫁いでひとつ屋根の下で暮らしていた」と聞き、谷村さんはこの話を小説にしたいと思ったという。(「クロワッサン オンライン」著者インタビューより)

 「元々の物語から飛躍して、一つの長編小説として紡がせていただくのを、ご家族は許してくれた。大沼という土地にはそのはじまりから、何ともハイカラな一面がある。この土地の持つオリジナリティと、道南独特の人懐っこいようなアクセントの方言の組み合わせの中で、男と女が順に結ばれていく。その中心には、おだんご頭のおばあちゃん。『大沼ワルツ』の執筆は、心躍らせながら続いていった」(著者「文庫版あとがき」より)

 実話をもとにした「昭和の大恋愛と大家族の物語」から、恋愛のパワーや家族愛といったものを感じとれるだろう。

 本書『大沼ワルツ』(小学館)は、これまで北海道を舞台に数々の作品を発表してきた谷村志穂さんが、5年の歳月をかけて紡いだ感動長編。2016年に単行本が刊行され、昨年(2019年)11月に文庫本が刊行された。

 谷村志穂さんは、1962年札幌市生まれ。北海道大学農学部卒業後、出版社勤務を経て作家に。90年『結婚しないかもしれない症候群』がベストセラーになる。2003年、北海道を舞台に描いた小説『海猫』で第10回島清恋愛文学賞を受賞し、映画化される。最新刊は、本書に登場する児童自立支援施設を舞台とした『セバット・ソング』。

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