本書『ていうか、男は「好きだよ」と嘘をつき、女は「嫌い」と嘘をつくんです。』（幻冬舎文庫）のタイトルの意味は、ひと目見ただけでは、わかるようなわからないような......。恋愛アドバイスの最中の一言を切り取ったようで、その前後が気になる。
著者のDJあおいさんは、ブロガー、恋愛アドバイザー。ツイッターで独自の恋愛観を綴り、一般人としては異例のフォロワー約36万人（2アカウント合計）。ブログ「DJあおいのお手をはいしゃく」は月間600万PVを誇る。『想いよ、逝きなさい』『じゃあ言うけど、それくらいの男の気持ちがわからないようでは一生幸せになれないってことよ。』など、著書も多数ある。
もう少し詳しい情報を求めてDJあおいさんのブログを見ると、「謎の主婦。著名人のファンも多く、幅広い層から支持されていますが、その素性はいまだ謎のままです」とあり、ますます興味を掻き立てられた。
本書は、そんな謎多きDJあおいさんが「男と女の違い」をズバッと言い当てた71の恋愛格言が収録され、「ていうか、男と女は違う生き物なんです。」「ちょっとそこに座りなさい。～DJあおいの説教部屋～」「いい男、いい女。」の3章から成る。軽やかに親しげに語りかける文体で、恋愛や男女に対する深い洞察が綴られている。
読者の性別、年齢、恋愛中か失恋後か、独身か既婚かなどによって、心に刺さる格言は異なるだろう。自分はもう恋愛をする年齢ではないと思っていても、例えば夫婦関係に当てはまるものもある。若者向けかと思い客観的に読んでいた評者も、いくつか刺さる格言が見つかった。
■彼の運転は、将来のあなたに対する態度。
車の運転時の性格と家でのその人の性格は見事に一致します。視野の広さ、判断能力の高さ、周りに不快感を与えない配慮、自制心の有無、他者との協調性......。車の運転で人間関係を形成するために大事なものをどの程度持っているのかがだいたいわかります。
■本当に好きになった人ほど、自分の好みとはかけ離れているもの。
「愛情」とは、その人の何を愛しているのかと言ったら、その人の命そのものを愛しているんですよね。......結婚というものは「お互いの命に寄り添い合うもの」。
本書は、右ページに格言、左ページに解説の形式でポンポン進む。ただ、タイトルのように男女の違いが逆説的に書かれている格言が多く、毎回立ち止まり、頭の体操が必要になる。ページ数も少なめで一見サラッと読めそうだが、1度読んですんなり理解するというより、手元に置いて、恋愛や夫婦関係に行き詰まる度に読み返すのが本書のふさわしい読み方だと思う。
本書を読みながら、DJあおいさんはどんなバックグラウンド故にこうした考え、悟りに至ったのかが気になった。それらがわかった上で読むと、一層説得力が増すと思う。
「いつも原稿を書くときはDJあおいさんに降臨してもらっているんですよ。......私の中で『DJあおい』というキャラクターはもうすっかり独立した人格をもっているひとりの人間みたいな存在なんですよね」
「おわりに」の言葉が謎めいている。DJあおいさんと素の著者は別々の人格であり、素の著者が意図せずともDJあおいさんが「真っ白な原稿の中で勝手に暴れまわってくれるような感じ」という。ますます興味を掻き立てられる。類書は多いが、本書に書かれている言葉は的を得ていて、奥が深い。著者の素性が明かされていないのが残念だが、内容からして信頼できる。
本書は、2016年に幻冬舎より単行本として刊行され、今年（2019年）文庫化されたもの。
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