毎週日曜日午後6時、フジテレビ系で放送されている国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』。主要なキャラクターの一人「はまじ」は、原作者のさくらももこさんの実際のクラスメイトがモデルだ。
本名は浜崎憲孝さん。『ちびまる子ちゃん』連載開始当時、9歳下の妹が愛読していた『りぼん』を見せてきて、「さくらももこの漫画にお兄ちゃんが出てる」と教えてくれたそうだ。
2001年に出版された浜崎さんのエッセイ『僕、はまじ』(彩図社)が、今年文庫化された。誰もが知るお調子者のクラスメイト・はまじや、『ちびまる子ちゃん』の他のキャラクターたちは、本当はどんな人物だったのだろうか。
まる子
さくらと僕は小学校3~6年、中学2、3年と、6年間も同じクラスだった。さくらが授業中に、教科書の端などに少女漫画のような絵を描いていたのを覚えている。それは『ちびまる子ちゃん』のような独特な絵じゃなくて、その頃流行っていた目がキラキラしているような絵だった。
たまちゃん
たまちゃんは笑い上戸だった。僕がなにか変なことをやって、それが他のクラスメイトにはうけなくても、たまちゃんだけは笑ってくれたりした。それも笑わせた僕の方が驚くぐらいの大声で笑うのだ。漫画ではおとなしいという感じに描かれているけど、実際は姉御肌の活発な女の子だった。
などなど、『ちびまる子ちゃん』のイメージそのままの人も、実際はちょっと違ったという人もいるが、一番の驚きは、まる子たちの3年4組の担任・戸川先生だ。漫画とアニメでは、眼鏡をかけていてスーツ姿の物腰柔らかな先生というふうに描かれているが、なんと現実の戸川先生は全くの真逆。サングラスをかけてジャージ姿、いかにも体育教師という見かけの「怖い」「厳しい」先生だったそうだ。
戸川先生は、たとえば次のような先生だった。
・冬の日でも窓を開けていなければならない。寒いのに全員体操着でいなければならないし、それに元気にしていなければならない(無理にでも)
・授業中は姿勢を正しくしていなくてはならない。姿勢が悪いと背中に1メートルの物差しを入れられる。僕はよく入れられた
・下校前のホームルームはとても長い。戸川先生の作詞・作曲の帰りの歌を歌ってから、反省会みたいなものをやってようやく帰れる
・サッカー部に入りたくないのに男性はサッカー部に入れさせられる
・ビンタをする(これは痛かった)
アニメで見ている3年4組とはかなり違った小学校生活だったようだ。
特に浜崎さんが詳しく語っているのが、プールのこと。戸川先生は水泳の教え方も厳しくて荒っぽく、当時泳げなかった浜崎さんはプールの授業が嫌で、たびたび学校から脱走していたそうだ。それがきっかけとなってだんだん学校へ行かなくなり、浜崎さんの記憶に色濃く残る「悪夢」の日々が始まる。アニメの中の、毎日学校で楽しく悪ふざけをしているはまじとは違った、人間・はまじの一面を本書で知ることができる。
本書では言及されていないが、戸川先生の他にも、現実と違う性格で描かれているキャラクターがいる。まる子に甘い祖父、友蔵だ。さくらももこさんは現実の祖父について、エッセイで「全くろくでもないジジィであった」と述懐している。「こうならよかったな」とほのぼのとした理想の世界をつくったのが、『ちびまる子ちゃん』が国民的に愛されるようになった理由なのかもしれない。
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