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幼き頃にあこがれた宇宙のことを何でもよいから始めよう

 私たちの生活と宇宙開発は、実はとても密接な関係にある。

 朝起きて「傘が必要かな、寒さはどうか、コートが必要かな」などと服装を考えるとき、天気の情報を見る。そこには気象観測衛星が宇宙から観測した情報が役立っている。

 そして、カーナビゲーションシステムも、全地球測位システムという人工衛星からの信号を基に、私たちを目的地まで案内してくれる。

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写真は、『宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌』(日経BP社)

 このように、宇宙開発によって得られた成果が身近なものになった今、宇宙開発は国家プロジェクトの域を超え、民間でも参入できる時代に突入しているという。

 イーロン・マスク氏はスペースX社を創業し、Amazon.comの共同創設者で取締役会長、社長のジェフ・ベゾス氏ら名だたる起業家も宇宙ビジネスに注目を寄せている。「New Space」と呼ばれる民間主導の宇宙ビジネスとは、いったいどんなものなのだろうか。

 本書『宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌』(日経BP社)の著者は、一般社団法人SPACETIDEの共同創業者兼代表理事で、内閣府の宇宙政策委員会宇宙民生利用部会委員も務める石田真康さん。石田さんは、グローバルコンサルティングファームA.T. Kearneyにて宇宙業界の経営コンサルティングなども経験するなど、宇宙ビジネスの最前線に携わっているだけあって、実際のプレーヤーについての分析も豊富。単なる概説書とは一線を画している。

 本書は、次の構成で、宇宙ビジネスの全体像の把握や各論の説明、そして、今後の課題についてもわかるようになっている。

[1]全体像
米国発・宇宙ビジネスビッグバン/宇宙産業の歴史/従来市場/新潮流/将来的な市場セグメント

[2]市場セグメントとキープレイヤー
宇宙へのアクセス/衛星インフラの構築/衛星および衛星データ利活用/軌道上サービス/個人向けサービス/深宇宙開発
  
[3]宇宙起業家たちのビジョン
イーロン・マスク/ジェフ・ベゾス/リチャード・ブランソン/ピーター・ディアマンディス/グレッグ・ワイラー/マーク・ザッカーバーグ/スティーブ・ジャーベソン

[4]宇宙産業エコシステム
法整備・政策/テクノロジー/リスクマネー/プラットフォーム

[5]世界各国の宇宙ビジネス
欧州/ルクセンブルク/イギリス/インド/中国

[6]日本の宇宙ビジネス
歴史と現状/近年の産業振興/宇宙産業ビジョン2030/日本の宇宙ビジネスイノベーション/新たな宇宙ビジネスエコシステム

[7]今後の可能性と課題
※出典:日経BP社「日経BPブックナビ」宇宙ビジネス入門のページより。


 以上のように、本書では、全体像や宇宙ビジネスの種類の説明と、そこで活躍する企業が体系的に述べられている。タイトルに入門と掲げているだけあって、専門的な知識がなくても読み進められる構成だ。


 本書の中で、石田さんは日本の状況について次のように述べている。

 「法整備や政策面での市場環境変化も追い風となって、日本でも近年新たなトレンドが生まれてきている」

 執筆当時、日本では、大小20の宇宙ベンチャー企業が存在しているという。かつての「宇宙開発=大型ロケット」という図式だけでなく、小型で高性能な技術が未来を切り開いていくという明るい話題だ。いろいろな方に、チャンスが巡ってくるのだろう。

 著者の石田さんは、小学生の頃にギリシャ神話を読んで星座に興味を持ち、天文クラブに入り、宇宙や銀河の存在に出会ったそうだ。しかし、その想いはいつしか薄れて、社会人になってからは、宇宙とは何も接点を持たずにいたという。そんな石田さんは、2012年にあることを思ったという「幼き頃にあこがれた宇宙のことを何でもよいから始めよう」。 それが今の石田さんの活動のトリガーになっている。

 これを読んでいるあなたも、もしかして、幼き頃に宇宙にあこがれていませんでしたか?

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