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3万年前、日本人の祖先は黒潮を超えて渡ってきた?!

  • 書名 3万年前の航海の謎を解く
  • サブタイトル日本人はどこから来たのか? NHKクローズアップ現代+取材チームの全記録
  • 監修・編集・著者名NHKクローズアップ現代+制作班 著
  • 出版社名徳間書店
  • 出版年月日2019年11月30日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数四六判・227ページ
  • ISBN9784198649814

 3万年前、日本人の祖先は大陸からどうやって来たのか? その謎に迫るため、国立科学博物館の海部陽介博士をリーダーに研究者が、台湾から沖縄・与那国島へ古代の大航海を再現した公開実験「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」を行った。その模様をNHK番組取材班が3年にわたり密着取材。 2019年11月、BS1スペシャルで放送された。本書『3万年前の航海の謎を解く 日本人はどこから来たのか? NHKクローズアップ現代+取材チームの全記録』(徳間書店)は、それを書籍化したものだ。

実験で再現する「沖縄ルート」

 「第1章  3万年前の航海の取材が始まった」「第2章  草舟 "小さなクジラ"草舟の挑戦」「第3章  竹筏舟 竹筏舟で、 どこまでも遠く」「第4章  丸木舟 そして彼らは海を渡った」「最終章  国立科学博物館・海部博士に聞く プロジェクトが遺した意味と深まる謎~そして、 わたしたち人類はどこへ行くのか?~」の5章構成。

 なぜ、海部さんがこのプロジェクトを始めたのか。アジア各地ではホモ・サピエンスより古い時代の人類の化石が見つかっているのに、日本列島ではこれまでにホモ・サピエンスの化石しか見つかっていない。

 そこで、こういう仮説をたてた。

 「日本列島には、ホモ・エレクトスなどの古い人類は到達出来なかったのではないか?」

 さらに、およそ3万年前から急にホモ・サピエンスの化石が現れ始めることから、

 「この頃、ホモ・サピエンスが大陸から海を渡って日本列島に移動して来たのではないか?」

 DNAなどの分析から、日本列島にホモ・サピエンスが移動して来たルートは、3つあると考えられている。サハリンから北海道にやってくる「北方ルート」、朝鮮半島から対馬を経由して渡ってきた「対馬ルート」、そして大陸から沖縄へ渡る「沖縄ルート」だ。

 最も謎で困難と思われる「沖縄ルート」を当時あった材料と道具、技術で再現するのが、このプロジェクトの目的だ。そこに立ちはだかった大きな壁が黒潮だ。

草、竹を使い失敗

 海部さんらはクラウドファンディングで研究費を集めた。1752人が支援し、5978万円が集まり、さらにスポンサーが現れ、約2000万円の寄付や協賛が集まった。

 2016年、最初の舟作りが沖縄の与那国島で始まった。取材したディレクターたちが、困難を極めた舟作りと航海実験の模様を報告している。

 最初は沖縄や台湾にあるヒメガマという草を貝でつくった鎌で刈った。地獄のような作業の末完成した草舟で与那国島から西表島へ70キロのテスト航海を行った。ところが、舟は黒潮の影響で、予定よりも北へ10キロ以上流された。また海水を吸った草舟のダメージも大きく、8時間、26キロ漕いだところで実験を断念した。

 次の年は台湾から竹舟で挑戦した。アミ族の協力を得て、麻竹という竹をしばり竹筏舟をつくった。台湾南部から40キロ離れた島を目指したが、黒潮によって北へ流されるだけで目的の島に到達できないことが分かり、航海を中止した。

最後は丸木舟で挑戦

 そしてラストチャレンジは2019年7月7日行われた。今回使ったのは丸木舟。石川県の能登で大きな杉を当時あった刃部磨製石斧(じんぶませいせきふ)と縄文式石斧を使い、6日かけて切り倒した。山梨県甲州市に暮らす"縄文大工"の雨宮国広さんが振った回数はおよそ3万6000回に及んだ。さらに中をくり抜いて長さ7.5メートルの丸木舟が完成した。

 7人の漕ぎ手で航海練習を繰り返し、本番に臨んだ。女性のメンバーも加わった。

計画的漂流で成功

 評者は、この番組の再放送を最近たまたま見たばかりだった。今回も黒潮と格闘したが、予想よりも早く突き抜け、その後舟は東へ西へと迷走した。疲れ切って長い休息を取る漕ぎ手たち。もう限界かな、と思ったときに与那国島が目前に迫っていた。45時間10分かけて島へ到着した。「計画的な漂流です。漕ぐ必要がない。黒潮があとは勝手に運んでくれる」。漕ぎ手の一人はそう語った。

 台湾北部の山からは空が晴れて空気が澄んだときに、うっすらと与那国島が見えるそうだ。この漕ぎ手も4日間、山で過ごして視認したという。

 偶然の漂流では北へ流され沖縄には到達しないことが研究で確かめられている。しかし、黒潮を利用しないと沖縄にはたどりつけないようだ。

 最終章で海部さんは「台湾から与那国島へ渡るって、追い出されて逃げていけるようなものじゃないって思いました。本当に行きたいと思って、計画を立てて、準備していかないと、ちょっと無理じゃないの、という気がします。だから目指して行ったというのは、やはりそうだと」と語っている。

 これで日本人がどこからやってきたのかが解明された訳ではない。しかし、その一歩に近づいたとは言えるのではないか。プロジェクトにかかわった人たちの苦労とその映像化が大変だったことが本書によって伝わってくる。

  

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