ゲノム解析技術の爆発的な進展、とくに次世代シークエンサという従来とはまったく異なる原理でDNA配列を読み取るマシンが誕生し、簡単にヒトのゲノムを読み取ることが可能になったという。著者のアダム・ラザフォードは理学博士。雑誌「ネイチャー」編集部に勤務した後、科学ジャーナリストとして英国で活躍している。本書は化石人骨に含まれる微量のDNAを抽出して解読する技術の発展がもたらした知見をもとに、人類進化の実像を語ったものである。
驚くべき事実が明らかになる。われわれホモ・サピエンスの祖先がネアンデルタール人とたびたび交接し、子をなした証拠がゲノムに記されているという。全DNAの2.7%がネアンデルタール人からのものだそうだ(ヨーロッパの平均値)。さらにシベリアの奥地で発見された第三の人類「デニソワ人」のDNAは現代のメラネシア人(フィジー、パプアニューギニア、オーストラリアの土着民)の中に健在だという。もうひとひねりあった。DNAだけに痕跡を残す「まぼろしの第四の人類」がいたというのだ。
このほかにも「狩猟から農耕への移行を加速させたのは、二つの突然変異が原因」「現存する全人類の共通祖先は、わずか3500年前、アジアにいた」「ヨーロッパを二度襲ったペスト菌はどちらも中国からやってきた」などの興味深い事実を紹介している。
著者が英国人なので、記述はヨーロッパ中心だが、巻末に国立科学博物館人類研究部長の篠田謙一氏による解説「ゲノムで辿る日本人のルーツ」が収められている。それによると「均一な縄文人」という概念には問題があり、大きな地域差があるという。また弥生人のゲノム解析で濃淡のある混血の様子が明らかになったという。日本人がどこから来て、どう成立したかも、この分野の研究によってわかる日が来るかもしれない。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?