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縁結び・縁切り祈願で出雲ひとり旅したくなる!

神様から友達申請されています

 島根の人口は47都道府県中46位。お隣の鳥取と字面がやや似ているためか間違われることが多い。外から見ると、山陰にひっそりとたたずむ県といったイメージだろうか。

 しかし、訪れたことのある方はご存知だろう。国宝の松江城、出雲大社、世界遺産の石見銀山、玉造温泉、宍道湖(しんじこ)に沈む夕景などなど、唯一無二の魅力が溢れる県である。2010年、出雲空港は「出雲縁結び空港」の愛称がつけられた。同年、県観光協会のマスコットキャラクター「しまねっこ」が誕生した。そんな盛り上がりもあり、ひとり旅の行先に島根を選ぶ女子が増えている。

 もりふみのさんの本書『神様から友達申請されています』(メゾン文庫)は、主人公が元彼との縁切りを祈願するため出雲を訪れる。その願いを叶えるため、縁結びの神様「クシナダヒメ」が主人公のスマホから突然現れる。そんな突飛な設定に興味を持って読み始めた。

縁切り祈願で出雲へ

 主人公・田中鈴音は29歳。鈴音は、元彼からのストーカー行為に悩まされている。部屋に侵入され荒らされる、待ち伏せされるなど、元彼の行為は日に日にエスカレート。

 友人に相談したところ、「オーラ診断であなたのお悩みをズバリ解決! オーラが視える店主があなたに合った貴石をお選びいたします」という店に行ってみないかと誘われ、鈴音は警戒しつつ同行した。

 店のオーナーは「今風の爽やか男子」で好印象だが、鈴音は信用できない。「今のあなたには命にかかわるような危険が近づいています」「あなたのオーラによくない色が混じっているから心配なんです。かなり嫌なオーラですね」などと言って客の不安を煽り商売するのは、霊感商法そのものではないかと。

 さらに「愛想笑いが必要なときもありますが、あなたは不必要に笑いすぎる。そのために受け入れられていると勘違いした者たちが寄ってくるんですよ」「ご自分の本心を隠して笑って誤魔化すから、ちょろいやつだと思われるってことです」と言われ、図星をつかれた悔しさと腹立たしさがこみあげてくる。

 鈴音はこの際、元彼と縁切りしようとスマホで「縁切り」を検索していくうちに、出雲のサイトにたどり着く。この週末に縁切りを祈願しようと、出雲行きを即決したのだった。

 「よし! ご縁の神様なんだもの。縁結びじゃなくて、縁を切ってもらうことだってできるはず!」

SNSに神様から友達申請が届く

 鈴音は出雲縁結び空港に降り立った。レンタカーに飛び乗り、八重垣神社、須我神社、出雲大社を順に目指す。ここでは、鈴音が「クシナダヒメ」と出会うきっかけとなった八重垣神社についてふれておこう。

 「八重垣神社の主祭神は、素戔嗚尊(すさのおのみこと)と稲田姫命(いなだひめのみこと)。素戔嗚尊が八岐大蛇(やまたのおろち)を退治するときに稲田姫命を隠した佐久佐女(さくさめ)の森の大杉を中心に八重垣を造った場所が奥の院として祀られている。
 素戔嗚尊と稲田姫命(別名 クシナダヒメ)は大蛇退治の後に結婚し、稲田姫命は恋愛成就の神様として祀られるようになった。奥の院にある鏡の池は、稲田姫命が隠れているときに飲料水にしたり、御姿をお映しになった池で、特に縁結び占いが有名である」

 元彼との縁切りを祈願していると、鈴音は鏡の池にスマホを落としてしまった。慌てて拾った直後、SNSアプリに「クシナダヒメ」という相手から友達申請の通知が届く。故障かと思い無視したが、出雲から帰ると「クシナダヒメ」から「そなたの願いを承知した」とのメッセージが届いた。

 すると目の前が光り、ピンク色の髪を腰まで伸ばした巫女装束の妖艶な女性が現れ、『我がそなたの願いを叶えてやろうと、こうしてわざわざ出雲から出てきてやった』と言った。彼女こそ「クシナダヒメ」。ここから鈴音は「クシナダヒメ」と使途の白兎からあたたかくにぎやかに見守られ、願いを成就させていくことになる。

 『そなたら人間には様々な繋がりがある。それが"縁"であり、それぞれが指先から糸のように伸びておるのじゃ。それを結ぶのが縁結びとなる。縁と申しても家族、友人など様々で色も様々。その中で左手小指から伸びておる赤い光が恋愛に関する縁なのじゃ』

 神社の公式サイトを見ると、かなり詳しく由来が紹介されている。小説をとっかかりにしてその土地の歴史を知り、訪れるのも面白い。本書は、縁結び、出雲、女子ひとり旅に関心のある方にピッタリの一冊。

  • 書名 神様から友達申請されています
  • 監修・編集・著者名もり ふみの 著
  • 出版社名株式会社一迅社
  • 出版年月日2019年9月20日
  • 定価本体640円+税
  • 判型・ページ数文庫判・281ページ
  • ISBN9784758092050
 

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