漫画や小説、テレビドラマですっかり有名になった『居酒屋ぼったくり』の著者、秋川滝美さんが、おひとりさま女子に贈る応援BOOKとして書いたのが、本書『ひとり旅日和』(株式会社KADOKAWA)だ。
「日和」とあるが、小説だ。主人公の梶倉日和(ひより)は、東京都内に住む24歳。大学卒業後、事務機器や文具を扱う小宮山商店株式会社に就職して2年目の会社員だ。
人見知りで要領が悪く、大学の指導教官のコネで入った会社でも直属上司の係長に叱られてばかりいる。そんなある日、社長の小宮山に呼び止められる。
実は係長のパワハラは問題になっているという。2年もよく我慢しているとほめられ、ストレス解消のため、ひとり旅を勧められる。
旅好きの先輩の勧めで、まずは日帰り旅行から始めることに。最初に選んだのは、静岡県の温泉地・熱海だ。団体旅行がすたれ、一時は斜陽観光地と言われた熱海だが、最近若者でにぎわっている。そんな変化を活写している。
パワースポットとして人気のある來宮神社を訪ね、茹でたての温泉玉子を味わい、昭和レトロな日帰り温泉に入る。最後は900円で大きなアジの焼き魚定食を食べた。
「好きなものを、好きなときに、好きなだけ、見たり食べたりできる。それは、誰かといる限り、その人の意見や顔色を常に気にしている日和にとって、何物にも代えがたい贅沢だった」
ひとり旅の楽しさに気付いた日和は、次に一泊旅行に挑戦する。行先は千葉県の水郷で知られる佐原だ。一人でホテルにチェックインするのは初めて。夕食は蕎麦屋でタコの唐揚げと豚の角煮とレモン酎ハイ、そして盛り蕎麦。ボリュームたっぷりで大満足。これまで人の後ろに隠れ、卑下ばかりしていた日和に少しずつ自信が生まれてきた。
さらに、仙台、金沢、博多へと遠くに足を伸ばすようになる。思わぬ出会いもあり、仕事にもいい変化が生まれてきた。
『居酒屋ぼったくり』には、簡単なつまみの作り方や全国の酒の話など、実用的な情報が盛り込まれていた。前作の『向日葵のある台所』(株式会社KADOKAWA)は、介護がテーマだったが、料理のひとこまが丁寧に書かれていた。
本書にも各地の食べ物や料理がさまざま登場する。秋川さんらしいサービスだ。交通手段の予約、ホテルの予約、現地でのいい店の選び方など、実際のひとり旅の場面を想定したあらすじになっているので、これからひとり旅をしようという人の参考になるだろう。
北陸新幹線の開通でにぎわっている金沢を2年前評者も訪れたが、ひとり旅らしき女性をほとんど見かけなかった。ほとんどが二人か三人連れ、あるいはカップルだった。
女性はひとり旅をあまりしなくなったのだろうか。ネットの発達で各地の情報を入手しやすくなり、宿だってさまざまな形態で以前よりはひとりで泊まりやすくなっているはずだ。
今までにない自分を発見したくなったら、ぜひひとり旅を。
BOOKウォッチでは、秋川さんの『居酒屋ぼったくり』(アルファポリス発行、星雲社発売)、『向日葵のある台所』(株式会社KADOKAWA)を紹介済みだ。
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