お正月になり、身内が集まる。何となく気になるのが親の様子だ。元気ならまだしも、少し弱っている姿を見ると、不安になる。いよいよ介護が始まるかなと。そして同時に、親の財産のことが心配になってくる。いくらぐらい持っているのか。どこに証書はあるのか。離れて暮らしているとなおさらだ。本書『親のお金守ります』(自由国民社)は、そうした不安にこたえた手引きだ。
本書は、「1章 『親のお金』マナーと急所」、「2章 『親のお金』をどう守る?」、「3章 『親のお金』どこが心配?」、「4章 『親のお金』をどう分ける?」、「5章 『親のお金』 相続その前に?」、「6 章 『親のお金』 はどこにある?」、「7 章 親が亡くなったあとのお金の出入り後始末」からなる。
親の面倒を誰が見るのか。資産管理もするのか――それが何となく決まっている家なら話は簡単だ。はっきりしない家だと、身内で腹の探り合いになりややこしい。状態が悪くなってからでは遅すぎる。
一般に親の高齢化に伴って発生する問題は三つあると思う。一つは、身辺整理。たいがい老親は「現役」を続けたがる。無理にでも、少しずつ身軽にさせなければならない。免許証の返上などもその一つだ。本人を納得させながらの作業になる。二つ目は騙されることの防止。オレオレ詐欺などに引っかからないように気を付けなければならない。それほどではなくても、知らないうちに、高額セールスにつかまり、何かを買い込んでいることもある。本人は良い買い物をしたと思い込んでいるから始末が悪い。
さらに進むと、介護が浮上する。ケアマネージャーと相談して、対応を考えねばならない。この段階になると、財産管理は完全に子どもの手に移る。
本書はそうしたステージを想定しつつ、Q&A形式で疑問に答えていく。最初の問いは「親の財産について 知っておくべきことはなんですか?」。親がどれだけの資産があるか、それを知っておくことが基本のキだ。親が元気なうちは聞きにくいが、まさかに備えて知っておかねばならない。聞き出す方法について本書は「これで決まりというような妙案はありません」と正直だ。とはいえ、いくつかの方法を提示する。
第2章では親が詐欺話に引っかからないための予防策を示す。老親が実家で一人暮らしなどをしていると、きわめて危ない。電話や飛び込みの高額セールスのカモになりかねない。世の中にはそういう老人をターゲットにしている悪徳業者がいくらでもいるからだ。金の先物買いのようなリスクの大きな投資に契約していたりすると、大損するかもしれない。実家に戻った時は必ず、新規の見慣れない契約書類がないか、チェックが必要だ。
6章では、親が亡くなった後、どうやって遺産を調べるかの手立ても詳述されている。子どもが知らない預金や不動産があることも考えられる。眠れる株や債券、ネット口座なども探し出さねばならない。手間がかかる。
評者はいくつかを経験したことがある。成年後見も自分でやった。仕事しながらだと大変だ。実父や義母が引っかかった高額セールスの金を取り戻したこともある。笑い事ではなく、やがて自分も同じ立場になる。だれしも一度は通る道といえる。本書を読んでおいて損はない。著者の小早川浩さんは文筆業。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?