読むべき本、見逃していない?

「仕事辞めない」「同居しない」介護エッセイ

  • 書名 子育てとばして介護かよ
  • 監修・編集・著者名島影 真奈美 著/川 イラスト・マンガ
  • 出版社名株式会社KADOKAWA
  • 出版年月日2019年9月13日
  • 定価本体1100円+税
  • 判型・ページ数四六判・176ページ
  • ISBN9784041081563

 女性が働き、高齢の親と子が別々に暮らす世帯は、今後さらに増えると予想されている。「仕事と介護の両立」「別居介護」「遠距離介護(中距離介護)」が、これからの介護世代にとってのキーワードになるという。

 「久しぶりに会った親の姿に、老いを感じた」「仕事は辞めない、同居もしない。今の暮らしを変えずに親の介護は可能?」――。

 介護が現実味を帯びてきたと感じている方、介護のスタート地点に立とうとしている方に、島影真奈美さんの本書『子育てとばして介護かよ』(株式会社KADOKAWA)をオススメしたい。帯に「笑いあり、冷や汗かきまくりの介護エッセイ」とあるとおり、笑えないテーマのはずが意外と笑えてしまう。

仕事・研究・介護のトリプル生活

 島影真奈美さんは、1973年宮城県仙台市生まれ。31歳で結婚。ライター&編集者をするかたわら、国内で唯一「老年学研究科」がある桜美林大学大学院に社会人入学した。

 33歳での出産を既定路線にしていたがタイミングを逃し続け、気づけば40代に突入。仕事と学業で多忙な生活に「妊活」が加わるのは厳しいと思っていた矢先、別居する義父母の認知症が立て続けに発覚した。まさかのダブル認知症におののきながらも、「介護のキーパーソン」として別居介護に参戦。現在も仕事・研究・介護のトリプル生活を送っている。

 実体験をもとに、新聞、雑誌、ウェブメディアで「もめない介護」「仕事と介護の両立」「介護の本音・建前」「介護とお金」などをテーマに執筆している。近年は「介護ときょうだい」「医療・介護専門職との関係構築」「親の終活支援と相続問題」などに関心があるという。

気づきづらい「認知症のサイン」

 本書の「第1章 義母からの電話」「第2章 介護のキーパーソンになる!」「第3章 認定調査を受ける」「第4章 介護サービス本稼働!」は、2016年4月から17年10月頃にかけての介護をめぐるすったもんだが綴られている。

 ケアタウン総合研究所代表・高室成幸さんの3つのコラム「意外と気づけない、認知症のサイン」「ケアマネジャーの選び方」「『介護する側』の負担を減らすためにできること」も参考になる。ここでは「認知症のサイン」を紹介しよう。

 「冷蔵庫の中が賞味期限切れの買い置きでいっぱいになっていたり、ゴミの分別ができなくなっていたり。久しぶりに行った実家で『あれっ?』と感じることが増えてきたら」認知症を疑ったほうがいいという。

 とはいえ、家族がこうした兆候に気づくのは難しく、親の老いを感じ始めたら「いっしょに家事をして動作を確認したり、話しぶりの変化を注意深く見守ったり」することを勧めている。

SOSを出して景色が変わった

 島影さんの奮闘ぶりを読みながら、評者は不安になった。介護はまだ遠い将来の出来事と思っているが、もし突然親からこんなことを言われたらどう対処したらいいのか......と冷や汗もののエピソードが満載。

 実の親と義理の親では、対処の仕方も違ってくるだろう。島影さんは、義父母と会った回数はわずか。とくに険悪ではないが、親しくもない間柄。

 ある日、普段鳴らない固定電話に立て続けに着信があり、気になって出てみると「あの子、きちんと家に帰ってきてる? ほかに女性がいるってことは......」「あったはずのお金と通帳がなくなっていて......」と、息子の浮気と窃盗を疑う義母からの電話だった。

 その半年後の電話では、「知らない女性が勝手に出入りしているの」と、自宅の2階に女性が棲みついていると義母は信じ込んでいた。聞けば聞くほど、義母の様子がおかしい。島影さんは思い切って、義父に「もの忘れ外来」の受診を提案する。大学院で学んだ知識をうまく織り交ぜ、なんとか義父母ともに受診するところまで持って行った。

 アルツハイマー型認知症の診断、服薬管理、要介護認定の申請、地域包括支援センターの親切な対応と対照的な役所のとびきりのお役所対応、ケアマネジャーによる訪問、訪問看護、介護費用の話し合い、デイケアの利用などなど、次々と新たな壁が立ちはだかる。

 「介護のキーパーソン」に立候補してしまった島影さんは、事あるごとに自分でなんとかしようとして限界に近い状態になっていた。それが数ヶ月経った頃、ようやくあることに気づいたという。

「『お手上げなんです!』そう言ってSOSを出してみることで、自分をとりまく景色が変わることがある。」

「親の老いとマイペースに向き合う」

 島影さんは「おわりに」で、現在の心境の変化と読者へのメッセージを綴っている。

「仕事と大学院と介護の3足のわらじは未だに投げ出したくなる瞬間もありますが、介護がスタートしたばかりの頃に比べると、ストレスのかわしかたや逃がしかたもうまくなりました。」
「親の老いが気になり、不安に思い始めているあなたのもとに、この本が届きますように。かつてのわたしのようにある日突然介護に巻き込まれても、ブンブン振り回されたとしても、日常を取り戻せますように。......親の老いとマイペースに向き合うきっかけのひとつとして本書が少しでもお役に立てたなら......」

 明るく奮闘する島影さんのリアルな体験記を読み、気持ちが楽になった。本書は、note「別居嫁介護日誌」と「毎日が発見ネット」の連載原稿に加筆・修正したもの。

 BOOKウォッチでは介護関連で『コータリンは要介護5』(朝日新聞出版)、『できることを取り戻す魔法の介護』(ポプラ社)なども紹介している。

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