読むべき本、見逃していない?

自分がいかに思い込みや偏見に満ちているかを知る本

日本と世界を知るためのファクト図鑑

 自分はけっこう常識もあるし新しい情報を仕入れているから、日本や世界についての知識は十分あり、合理的な思考をしている、と思っているあなた! 本書『日本と世界を知るためのファクト図鑑』(宝島社)を読めば、そんな自信が足元から崩れるかもしれない。

韓国軍の軍事力は日本の自衛隊とほぼ同等である

 日本と世界についてのファクトとありがちな「思い込み」を並べる形で、105の項目を解説している。とりあえず、いくつかファクトを挙げる。違和感をもった人は、なんで? と関心を持ってもらいたい。

 ・日本は「極東の小さな島国」ではなく、わりと大きな島国だ
 ・日本の学生の学力は、低下しつつもまだまだ世界トップクラス
 ・世界的に見た国内最高峰の大学は、東大ではなく京大
 ・日本の機械工業は世界の進化に遅れつつある
 ・野球観戦を楽しむファンは、減るどころかむしろ増えている
 ・北方領土問題では4島一括よりも2島返還のようが現実的である
 ・金正恩は北朝鮮で巨大カジノ建設を進めている
 ・訪日韓国人が感じた日本の生活水準の低下が反日感情に火をつけた
 ・韓国軍の軍事力は日本の自衛隊とほぼ同等である
 ・書店に溢れる「中国崩壊本」はどれも根拠が薄い
 ・アフリカ大陸はもう暗黒大陸ではない
 ・受動喫煙が嫌なら欧米諸国に行ってはいけない
 ・アメリカは日本以上に学歴主義である
 ・2100年以降、人口は増えない
 ・世界でもっともプレーされているスポーツはサッカーではない

 8割くらい「知ってるもん」と思った人は、思い込みや偏見を排除して、日頃から信頼できるデータや情報に接していると安心していいだろう。「おかしいな」と思った人は、世界をあまりに単純化して理解し、偏った情報を受け入れている、と自戒した方がいい。

マスコミ、ネット情報の罠

 監修にあたった評論家の佐藤優氏は、マスコミの情報やインターネット上にあふれる無数の情報は「物事の極端な面にフォーカスしてしまいがちで、その結果私たちを間違った理解や解釈へと導く傾向にある」と警告する。

 そのためには、本書のようなグラフや地図、チャートを用いたファクト集、データ集に接してバイアスを修正する作業を意識的にする必要がある。恥ずかしながら、評者も本書を読み、かなり蒙をひらかれた思いがする。

 冒頭に挙げた「ファクト」について、韓国にかんする2項目について、本書はこう解説している。

 「日本の生活水準の低下を、インバウンドで来日した裕福な韓国人は、皮膚感覚として感じ取っているのだ。その結果、韓国が脆弱だった時代に結ばれた日韓基本条約や日韓請求権協定が、不当な条約に見えてしまっているのである」
 「最終的に外交は、国力と国力の均衡点が落としどころになる。もし、韓国に対して優位な立場でいたいなら、日本が自らの国力を、粛々と上げていくしかないのである」

 軍事力にかんしては、こう説明している。

 「経済成長の結果、増大した韓国の軍事費は世界10位。第9位の日本の92%に達し、第8位のドイツに迫る勢いだ」
 「かつてのように対日関係や集団的自衛に重要性を見いださせ、日本との協力関係を復活させるのは、もはや不可能といわざるを得ない」

 韓国の人口は日本の半分以下でありながら、韓国軍の総兵力は63万人で、23万人の自衛隊を3倍弱で上回っている、という現実からも目をそらすことは出来ない。

高校教科書レベルの学び直しを

 こうした最新の国際情勢を押さえる前に、佐藤氏が日頃著書で勧めているのが、高校レベルの日本史、世界史、理科、数学、英語など基礎学力のマスターだ。そこそこの大学を出た社会人でも理系では社会科目の基礎知識、文系では理数系の基本が欠如している人は少なくない、と指摘する。

 そういえば、「東大最年少准教授」の肩書で本を出したAIの専門家が、中国人を不当に差別する書き込みをネットにして、炎上。その寄付講座のスポンサー企業が降りるという事態が最近あった。「高専卒」(その後筑波大を経て、東大大学院修了)を売り物にしていたため、ネットでは「社会科の勉強がおろそかで常識不足」といった批判がされた。

 偏見や思い込みを排して世界を正しく解釈するヒントが、本書に満ちている。グラフ、チャート、イラストが満載なので、正月休みに寝転がって眺めているうちに、一皮むけること間違いない。

  
  • 書名 日本と世界を知るためのファクト図鑑
  • 監修・編集・著者名佐藤優 監修
  • 出版社名宝島社
  • 出版年月日2019年12月11日
  • 定価本体2000円+税
  • 判型・ページ数判・223ページ
  • ISBN9784800299710

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