年金や老後資金のことがひんぱんに話題になる。それだけ心配な人が多いのだ。一方では左ウチワの人もいる。国内・海外旅行や温泉、ゴルフ、グルメ三昧・・・。うらやましい限りだ。本書『なぜあの人は「老後のお金」に困らないのか?』(クロスメディア・パブリッシング)というタイトルを見て思わず身を乗り出す人は少なくないのではないか。
類書は多々あると思われるが、本書の特徴は二つある。一つはサブタイトルに示されているように、著者の武田拓也さんの経歴。「老人ホームで働き、金融機関で学んだ私だからわかる」。これはめずらしい。もう一つは、「超初心者のための『資産運用』の教科書」。こちらは「超初心者」というところがポイントだ。
武田さんは1983年生まれ。大学では福祉を学び、社会福祉士になって有料老人ホームの管理者をしていた。いろんな老夫婦が施設見学に来る。「気に入りました」というものの、月額30万円だと聞くと、「・・・もう少し考えさせてください」といって帰ってしまう。 武田さん自身も25歳で結婚し、小さな子もいたから、自身の老後が心配だった。仕事をしながら独学で投資の勉強を始めたが、どうも手ごたえが感じられない。そこで一念発起、大手外資系生命保険会社の営業へ転職、正しい知識を身につけ、ファイナンシャルプランナー・IFA(金融商品仲介業)の資格も取る。現在は独立。かなりの回り道をしたが、かえって仕事にリアリティと厚みを増すことになった。
「超初心者向け」というのも、現場経験に基づくものだろう。実際のところ、世の中の大半の人は投資の知識がない。多少の手持ち資金があっても、何に投資したらいいか分からない。株式投資、投資信託、不動産投資、債券などの明確な区別を答えられない人がほとんどだ。挙句の果てに、金融機関のカモにされる。
本書で好感を持ったのは、「初心者の人はどうしても『旬の話題』に目が行きがちになります」と警告していること。たとえば株やFXについて。
株価は「アベノミクス以降、右肩上がり」。そのことは認めつつ、「2019年前半時点で高値圏にあり、消費増税や東京五輪後の景気動向が不透明なことから、現状で積極的にはおすすめしていません」。FXについては、「世界情勢や経済ニュースをよく理解し、把握する必要があります」。つまりは「初心者」が手を出すものではないということだろう。
結局のところ、何に投資するかは本人の状況によって変わってくる。資産状況はもちろん、知識、年齢、リスク、運用の手間など。短期のリターンが欲しいのか、それとも老後資金か。
本書は「働きながら、子育てしながらできる"ほったらかし投資"で資産を作る」という序章から始まり、全5章でアドバイスする。「第3章 お金が増える『投資信託』の選び方」「第4章 年収400万円から始められる『不動産投資』」などは気になる人も多いに違いない。「第5章」では実践講座として資産運用の5つの「事例」が並んでいる。
初心者向けの投資話では、荻原博子さんの『投資バカ――50歳を過ぎたら取ってはいけないお金のリスク』 (宝島社新書)など一連の著作を思い出す。金利が低いときは「投資」よりも「節約」を、という趣旨が記憶に残っているが、少しは投資もしてみたいと考えている人にとっては、本書などが参考になるかもしれない。
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