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個人保証人の保護~根保証に関する見直し(第5回)

西村あさひ法律事務所 髙木 弘明

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第5回は、保証に関する見直しについて解説します。

設例

Aさんは、友人であるBさんからの依頼を受け、Bさんがタワーマンションの部屋を賃借するに際して賃貸人であるC社に対するBさんの家賃債務について根保証契約をC社との間で結びました。その根保証契約では、極度額や元本確定期日については何も定められていませんでした。ところが、その後Bさんが破産したため、AさんはC社から保証債務の履行として遅延損害金を含め200万円の支払請求を受けました。AさんはC社に対して支払をしなければならないのでしょうか。

1.個人保証人の保護と平成16年民法改正

 保証とは、主債務者が債務の支払をしない場合に、これに代わって支払をすべき義務のことをいいます。保証には、(A)契約において特定した債務に限って保証する通常の保証(たとえば、特定のローンの支払に関する保証)と、(B)保証の対象を特定せず、将来発生する不特定の債務を保証する根保証(たとえば、継続的な事業用融資に関する保証)の二つに大きく分類することができます。

 根保証は、いわば融資枠に対する保証であり、たとえばX社に1000万円の融資枠が設定され、当初100万円の融資が実行されたところYさんがX社の債務について根保証をすると(この場合、融資枠1000万円のことを極度額といいます)、Yさんは当初の100万円だけでなく1000万円について保証をしたこととなります。そのため、その後X社が一旦100万円を弁済したとしても、後日にX社に対し900万円の追加融資が実行され、更にX社が破産したような場合、Yさんは根保証人として900万円(及び利息・遅延損害金)を支払わなければなりません。さらに、根保証契約の中には、極度額を定めない(つまり、保証の上限がない)根保証もありました。

 保証に関しては、商工ローンの保証の取立てを巡り社会問題が起きたことを背景に、平成16年に民法が改正されました。そこでは、貸金等債務の根保証をした個人保証人を保護するため、主たる債務に貸金等債務が含まれる根保証契約について極度額の定めのないものを無効とするほか(現行民法465条の2)、保証人が責任を負う対象を元本確定期日までの間に行われた貸金等に限定する(現行民法465条の3)という内容の改正が行われました。元本確定期日とは、貸金等に係る根保証契約において定める一定の日で、その日が来れば、本来不特定の債務が保証対象とされていたところが、その日における債務に特定される(保証人が責任を負うべき主たる債務の金額が確定する)という日のことをいいます。言い換えれば、保証人は元本確定日以降に生じた債務については責任を負わなくてよいというものです。

2. 改正民法の趣旨と内容

 このように平成16年民法改正により規律の見直しがされましたが、主債務者から個人的に依頼されて保証人となった者が、想定外の多額の保証債務の履行を求められ、生活の破綻に追い込まれるなど、保証を巡る社会的問題は引き続き後を絶たず、包括根保証の制限及び保証人の更なる保護拡充(第三者保証の制限)が平成16年改正以降も課題として認識されていました。

 他方で、保証制度は、特に中小企業向けの融資において、主債務者の信用の補完や、経営の規律付けの観点から重要な役割を果たしています。

 そこで、改正民法では、極度額の定めの義務付けについては、全ての根保証契約について極度額の定めを義務付けることとしました(改正民法465条の2)。また、全ての根保証契約について、主債務者の死亡や、保証人の破産・死亡等の特別な事情があった場合には根保証契約が打ち切られることとしました(改正民法465条の4)。

 上記の事例では、現行民法の下ではAさんとC社の間の根保証契約は有効ですが、改正民法の施行後は同契約は無効とされますので、Aさんは支払義務を負わないこととなります。

3. 今回の改正で見直されなかった事項

 他方、保証期間の制限(元本確定期日の設定義務付け)については、現行民法の規律を維持し、賃貸借等の根保証には適用しないこととされました(改正民法465条の3参照)。また、主債務者が破産した場合等には、賃貸借等の根保証は終了しない(遅延損害金について打切りにならない)点も現状の規律が維持されています(改正民法465条の4参照)。

 そのため、仮に上記の事例でAさんとC社の間の根保証契約に極度額が定められていたとすれば、同契約は改正民法の下では有効であり、主債務者であるBさんが破産しても根保証が終了しない(遅延損害金がその後も生じていく)こととなります。

図表 包括根保証の禁止の対象拡大

主債務に含まれる債務 貸金等債務あり 貸金等債務なし
(賃借人の債務等)
極度額 極度額の定めが必要 極度額の定めは不要

必要
元本確定期日
(保証期間)
原則3年(最長5年) 制限なし
元本確定事由
(特別事情による保証の終了)
破産・死亡等の事情があれば保証は打切り 特に定めなし

破産・死亡等の事情(主債務者の破産等を除く)があれば保証は打切り

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■著者プロフィール


takagi.jpg 弁護士 髙木弘明(西村あさひ法律事務所)

西村あさひ法律事務所パートナー。学習院大学法科大学院特別招聘教授(2016年~)。2002年弁護士登録(第55期)。2005年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科非常勤講師。2008年シカゴ大学ロー・スクール卒業(LL.M.)。2008年~2009年ポール・ワイス・リフキンド・ワートン・ギャリソン法律事務所(ニューヨーク)に勤務。2009年ニューヨーク州弁護士登録。2009年~2013年法務省民事局参事官室出向(2010-2013年法務省民事局商事課併任)(平成26年会社法改正の立案等を担当)。


●著書等
『平成26年会社法改正と実務対応〔改訂版〕』(商事法務、編著、2015)、『監査等委員会設置会社のフレームワークと運営実務――導入検討から制度設計・移行・実施まで』(商事法務、共著、2015)、『改正会社法下における実務のポイント』(商事法務、共著、2016)、『ビジネス法体系 企業組織法』(レクシスネクシス、共著、2016)、『会社法実務相談』(商事法務、共著、2016)等、著作論文多数。

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