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母親が「毒親」になる4つの事情とは?

「毒親」の正体

 1月18日(2018年)に本欄で紹介した『精神障がいのある親に育てられた子どもの語り』(明石書店)へのアクセスが今でも毎日上位にランクしている。「毒親」という言葉は、それほどに定着しているのか、また「毒親」に関心を持つ人はそれほど多いのか? と編集部でも話題になっている。

 「やっかいな親問題の画期的解毒剤」と称して精神科医の水島広子さんが書いたのが本書『「毒親」の正体』(新潮社新書)である。「毒親」を作る精神医学的事情は以下の4つのパターンがあり、何の事情もなく「毒親」になることはないという。

1 発達障害タイプ(自閉的スペクトラム障害=ASDと注意欠如・多動性障害=ADHD)
2 不安定な愛着スタイル(不安型と回避型)
3 うつ病などの臨床的疾患(トラウマ関連障害、アルコール依存症)
4 DVなどの環境問題(深刻な嫁姑問題、育児に対する心の準備不足)

 水島さんが診てきた「毒親」で最も数が多いのは、実は発達障害の人たちだという。

 さて、自分が「毒親」に育てられたと自覚した場合はどうしたらいいのだろうか? 水島さんは次の5つのステップでの脱出を勧める。

 「自分は悪くなかった」と認める→「怒り」「混乱」を受け入れる→親にも事情があったと認める→親にできることを整理する→現実的なつきあい方を考える

 本書がユニークなのは第7章として、「毒親」とされた親御さんへ、と題して親への呼びかけをしていることだ。一生懸命やってきたつもりなのに、なぜ「毒親」と非難されるのか、それは何らかの形で子どもを振り回してきたからだ、と著者は考える。子どもから見て「ルールがわからない」から親に振り回されたと感じるのだ。それを転換するには、まず子どもを主体に考えてみるところから始めてほしいという。

 それにしても、水島さんが分類した4つの事情を見ると、想像以上に「毒親」になるケースは多いことが分かる。だからこそ、「毒親」という適切な表現を得て、いま「毒親」が流行語になる勢いなのかもしれない。

 水島さんは慶應病院の精神神経科勤務を経て、2000~2005年衆議院議員を務め、児童虐待防止法の抜本的改正に取り組んだ人だけに、この問題の処方箋を書くには適任な人選と言えよう。

  • 書名 「毒親」の正体
  • サブタイトル精神科医の診察室から
  • 監修・編集・著者名水島弘子 著
  • 出版社名新潮社
  • 出版年月日2018年3月20日
  • 定価本体720円+税
  • 判型・ページ数新書判・189ページ
  • ISBN9784106107566
 

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