認知症の原因の7割近くを占めると言われるアルツハイマー病。その治療薬となる新薬、レカネマブがまもなく国内で正式に承認され、年内にも患者に使用される見通しだ。
とはいえ、一般に処方されるまでにはまだまだ時間がかかりそう。もの忘れが増えたかも? と思ったら、自力で認知症予防の対策をとっておくに越したことはない。その方法を教えてくれるのが、『認知症になりにくい人・なりやすい人の習慣』(Gakken)だ。監修は認知症専門医の長田乾さん。
本書によれば、アルツハイマー病は脳の中にアミロイドβというタンパク質が溜まることで引き起こされるが、画像診断でアミロイドβが確認されているにも関わらず、認知症を発症していない人が約30%もいることが明らかになっているという。つまり、認知症には「なりにくい人」と「なりやすい人」がいるのだ。
何が違うのか? 本書の「はじめに」で長田さんは、脳に明らかなアルツハイマー病の病理所見が多く見られるにも関わらず、101歳で亡くなるまで頭脳明晰で正常な認知機能を維持していたアメリカの修道女の例を挙げ、「遺伝的な要因も多少あるとはいえ、認知症発症リスクの多くは生活習慣に負うところが大きいのです」と言っている。
認知症に関連した論文には、身体のことから生活習慣、既往歴、趣味や嗜好などを含めた多くの研究結果が残されている。「早く歩く人」「社交的な人」「多言語を話す人」など、認知症になりにくい人についての要素や認知症の発症リスクがわかってきているという。
「なりにくい人」にはほかにも、「中年期はやせ型」「頭が大きい」「耳の聞こえがよい」「握力が強い」「教育歴が長い」「楽器を演奏する」「自分でお金を管理する」......といった特徴が挙げられている。
認知症になりにくい人たちは、認知機能の低下にあらがう力を備えていると考えられており、その能力や特性を「認知予備機能」という。本書では、その認知予備機能を鍛えるための生活習慣についても詳しく紹介している。
頭の大きさや耳の聞こえ、やせ型かどうかなどは自力で変えることは難しいが、歩幅を広げて速足で歩く、楽器を習ってみる、自分でお金を管理するなどは今からでも取り組める。新薬に多大な期待を抱くより、まずはできることから始めよう。
■長田 乾さんプロフィール
ながた・けん/医療法人社団緑成会横浜総合病院臨床研究センター長、横浜市認知症疾患医療センター長。
1978年に弘前大学医学部を卒業。その後、脳血管研究所美原記念病院神経内科、コロラド大学神経内科、秋田県立脳血管研究センター神経内科学研究部などを経て、2016年より横浜総合病院臨床研究センター長、2020年より横浜市認知症疾患医療センター長に就任。
専門分野は、認知症、脳卒中、神経心理学、画像診断。主な著書は、『「うちの家族、認知症?」と思ったら読む本』、『ナースが知っておく 認知症"これだけ"ガイド』、『【イラスト図解】認知症の「なぜ?」「どうする?」がひと目でわかる本』(いずれも株式会社 Gakken)、『脳卒中・脳外傷者のためのお助けガイド』(青海社)などがある。
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