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僕は8万円で人生を売った――若者に広がる「闇バイト」、逃げられないワケ

闇バイト

 2023年1月19日、東京都狛江市で90歳の女性が強盗集団に暴行され、殺害された。逮捕された実行役たちは、SNSで「闇バイト」として集められていた。

 「封筒を運ぶだけで5万円」などといった破格の報酬で、若者たちの間に広がっている闇バイト。なぜ、犯罪とわかっていても引き返せなくなってしまうのか。その実態を、犯罪社会学者の廣末登さんが著書『闇バイト 凶悪化する若者のリアル』(祥伝社)にまとめた。


 本書冒頭には、コロナ禍でアルバイト先の飲食店が休業し、お金に困った若者のエピソードが書かれている。貯金が底をついて焦り、怪しいとわかっていても「高額案件、即金、仕事」と検索してしまう。「ノーリスク」「違法ではありません」という謳い文句が目に留まり、コンタクトをとってみると、短い電話面接と免許証の写真ですぐに採用。最初は、お金の入った封筒を運ぶだけで3万円という簡単な"仕事"だった。

 ところが翌日、「急遽、代打で」と、別の"仕事"を5万円で頼まれた。「訪問」と呼ばれるそれは、銀行職員をかたってキャッシュカードをだまし取る特殊詐欺の同行だった。怖くなった若者は「仕事をやめたい」という連絡をするも、「君の個人情報をネットに晒す」と脅され袋小路に。

「僕は八万円で人生を売ったのだ――」

 絶望した若者の家に警察がやって来て、逮捕されるところで話は終わる。このエピソードはフィクションだが、これに似た事例は少なからずあったはずだと廣末さんは言う。

 SNSでの募集や内容の手軽さから、「1回くらい大丈夫」という軽い気持ちで足を踏み入れ、引き返せなくなってしまう闇バイト。本書ではまず、その指示役である「半グレ」とはどのような組織なのか、構成員への直接の取材から解説している。さらに、闇バイトの勧誘システムや、詐欺電話をかける「ハコ」「ルーム」、「闇名簿」売買など、その実態と犯罪現場を、経験者への取材に基づいてリアルに紹介している。若者たちを闇に陥れる社会構造に警鐘を鳴らす一冊だ。

【目次】
序   闇バイトへの扉
第一章 闇バイトの仕掛け人「半グレ」
第二章 半グレのリアルな横顔
第三章 闇バイトの実態と犯罪現場
第四章 証言 闇バイトのリスクと真実
第五章 闇バイトを生み出す社会構造


■廣末登さんプロフィール
ひろすえ・のぼる/1970年、福岡市生まれ。社会学者、博士(学術)。専門は犯罪社会学。龍谷大学犯罪学研究センター嘱託研究員、久留米大学非常勤講師(社会病理学)、法務省・保護司。2001年北九州市立大学法学部卒業、08年同大学大学院社会システム研究科地域社会研究科博士後期課程修了。国会議員政策担当秘書、熊本大学イノベーション推進機構助教、福岡県更生保護就労支援事業所長等を経て、現職。裏社会の実態を科学的調査法に基づいた取材を重ね、一次情報をもとに解説する。著書に『ヤクザになる理由』『だからヤクザを辞められない』(ともに新潮新書)、『ヤクザと介護』『テキヤの掟』(ともに角川新書)等がある。



    
  • 書名 闇バイト
  • サブタイトル凶悪化する若者のリアル
  • 監修・編集・著者名廣末 登 著
  • 出版社名祥伝社
  • 出版年月日2023年7月 4日
  • 定価1,023円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・224ページ
  • ISBN9784396116835

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