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親の世話できょうだいとギスギス...気持ちが楽になる本ってありますか?【お悩み解決BOOKコンシェルジュ 1】

BOOK HOTEL 神保町

BOOK HOTEL 神保町

やさしさを忘れぬうちに

 あなたのお悩み、本が解決します!

 本の街、東京・神保町にある「BOOK HOTEL神保町」では、お客さんのお悩みにぴったりの本をスタッフが提案する、「ブックカウンセリング」というサービスが人気。このたび、BOOKウォッチとコラボして、ホテルのスタッフがさまざまな相談に本を通して応えていく新連載がスタートします。題して「お悩み解決BOOKコンシェルジュ」です。

 初回はどんな相談が寄せられたのでしょうか?

【今回のお悩み】

 高齢の母が体を悪くし、父もいつ何があるかわからない状況で、きょうだい間での世話の分担に悩んでいます。私、弟、妹の3人きょうだいで、全員既婚です。妹家族は両親と同居、すぐ近くに弟夫婦が暮らしていて、私は少し離れたところに住んでいます。
 妹ばかりが両親の世話を頑張っている一方で、すぐに駆けつけられるはずの弟はあくまで「手伝う」という態度です。両親は弟に甘くて、妹には感謝せず、妹も弟(妹から見ると兄)ではなく私ばかりを頼ってきます。心苦しいですが、あまり手を貸しすぎると弟が何もしなくなると思い、私は最低限のサポートだけをしています。私だけ母と血がつながっていなくて、弟・妹と育て方に差をつけられたと思っているので、そのわだかまりもあります。
 家族の嫌なところばかりが見えてきて、様子を聞くだけでストレスが溜まる日々です。(60代女性)

 このお悩みに、3人のホテルスタッフが1冊ずつ、おすすめの本を紹介してくれました。

「淡々とこなす」と楽になるかも

『雨夜の星たち』
寺地はるな 著(徳間書店)


▼概要
 主人公の三葉雨音は、他人に感情移入できない26歳。同僚の星崎くんの退職を機に仕事を辞めて無職になった三葉は、他人に興味を持たない性格を見込まれて「お見舞い代行業」にスカウトされます。仕事の内容は、移動手段のないお年寄りの病院送迎や雑用など。仕事で出会ったお年寄りや周囲の人々と三葉の交流が描かれています。

▼選書理由
 相談者様が感じているストレスの原因のひとつに「あえて手を貸しすぎないようにしている」ことへの罪悪感のようなものがあるのではないかと思いました。
 この作品の主人公の三葉は、空気を読んだり相手の意図を汲み取ったりせず、言われたことだけを淡々とこなしていきます。そんな三葉のような考え方や行動ができたら楽なのに、実際に三葉のように生きるのは難しいですよね。三葉は思いやりのない冷たい人間だからできるのではないかとも思ってしまいます。しかし、三葉が発する言葉にはあたたかみがあり、読者の胸に刺さります。完全に三葉のように行動することは難しくても、罪悪感を和らげるヒントが三葉の言葉から得られるかもしれません。
(選書スタッフ:石原)

「人生はそういうもの」と受け入れてみると

『車谷長吉の人生相談 人生の救い』
車谷長吉 著(朝日新聞出版)


▼概要
 朝日新聞「悩みのるつぼ」で連載された人生相談の質問・回答をまとめた本書。「最後の文士」や「私小説家の鬼」と名高く、直木賞作家でもある著者の歯に衣着せぬ苛烈な回答は、新聞連載時も話題になりました。12歳から80歳まで、老若男女のありとあらゆる悩みに答えます。解説は作家・万城目学さんです。

▼選書理由
 家族の悩み、いつまで経っても尽きないですよね。きっと今までも色々と苦労をされてきたのだと思います。「人生相談の本」というストレートな選書ですが、相談者様のお役に立つ可能性を感じ、ぜひこちらの本をお読みいただきたいと思いました。生まれつき病気を持ち、貧乏で、さまざまな困難に遭い、著者は強い劣等感と「人生に救いはない」という考えを持ちます。単にキャッチーな毒舌であったり、突き放したりするのではなく、「そういうものだ」と人生を深く受け入れる姿勢で、淀みなく嘘なく回答します。身も蓋もない回答に笑わされ、ストレスが吹き飛ぶような瞬間もあります。簡単な言葉で慰めようとせず、希望もありませんが、なぜか温かく心地よく感じるのです。辛さや苦労も含め、「生きることを味わう」新たな視点を与えてくれる本です。
(選書スタッフ:木村)

本でゆっくり、ひと息ついて

『やさしさを忘れぬうちに』
川口俊和 著(サンマーク出版)


▼概要
 『コーヒーが冷めないうちに』シリーズ第5弾。舞台は、とある町の喫茶店「フニクリフニクラ」。この喫茶店のある座席には不思議な都市伝説があった。その席に座るとその席に座っている間だけ望んだ通りの「時間」に移動ができるという。制限時間はカップにコーヒーを注いでから、そのコーヒーが冷めるまでの間だけ。止まってしまった「今」を未来へと動かすために過去に戻る、4人の男女の物語。

▼選書理由
 お悩みを拝見して、ご両親のこと、ごきょうだいのこと、常に周りの状況を見て動いている、とても優しい方という印象を受けました。それと同時に姉という立場がそうさせているような気がして、ゆっくりひと息つける時間をプレゼントしたいなと思い、選びました。
 また、登場人物はみな喫茶店の不思議な座席を通じて、自分自身や周囲の人々と向き合い、過去や未来に向き合っています。その様子から自分自身や家族について深く考えることで、悩みを解決するヒントが得られるかもしれません。
 すぐに、きれいに解決するのは難しいかもしれません。それでも考え、向き合っているあなたはすごいです。ぜひ疲れてしまう前にひと休みしてくださいね。
(選書スタッフ:鶴田)

お悩み募集中!

 「お悩み解決BOOKコンシェルジュ」では、読者のみなさまのお悩みを募集しています。

 読者投稿フォームから、お悩みの具体的な内容(500文字程度~)、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。

(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいたお悩みを編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)

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  • 書名 やさしさを忘れぬうちに
  • 監修・編集・著者名川口 俊和 著
  • 出版社名サンマーク出版
  • 出版年月日2023年3月20日
  • 定価1,540円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・283ページ
  • ISBN9784763140395

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