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シリーズ100万部突破! あの日に戻れたら、誰に会いに行きますか?

コーヒーが冷めないうちに

 川口俊和の『コーヒーが冷めないうちに』(2015年)と続編『この嘘がばれないうちに』(17年)のシリーズ(ともにサンマーク出版)が、100万部を超えるベストセラーとなっている。今年(18年)9月21日にはいよいよ映画「コーヒーが冷めないうちに」(監督 塚原あゆ子 /主演 有村架純)が公開される。

 著者の川口俊和は、1971年生まれ。大阪府出身。元・劇団音速かたつむり脚本家兼演出家。本作の元となった舞台、1110プロヂュース公演「コーヒーが冷めないうちに」で杉並演劇祭大賞を受賞。本書は、著者の小説デビュー作となる。2017年には本屋大賞にノミネートされた。

 もともと舞台作品だった本作が書籍化されたのは、「コーヒーが冷めないうちに」の舞台を偶然見に来て感動したサンマーク出版の編集者が、終演後に川口氏を探し、その場で「この舞台を小説にしませんか?」と依頼したのがきっかけだ。川口氏は小説を書いた経験がなかったが、4年をかけて書き上げた。出版社側が1000個以上も手づくりしたカフェのボードメニュー風パネル、JRの広告などが功を奏し、あっという間に書店の在庫がなくなり、毎日束になるほどの読者はがきが届くなど、反響が大きかったという。サンマーク出版が得意とする丹念な広報戦略が奏功したようだ。

 タイトルからは内容を察しづらいが、帯にある「過去に戻れる喫茶店」に興味を持った。とある街の、とある喫茶店の、とある座席には、その席に座っている間だけ望んだ通りの時間に移動できるという都市伝説があるという。ただし、そこには「非常にめんどくさいルール」があった。そのルールとは...

一、過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事ができない
二、どんな努力をしても、現実は変わらない
三、過去に戻れる席には先客がいる 席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ
四、席を立って移動する事はできない
五、過去に戻れるのは、コーヒーが冷めてしまうまでの間だけ

 第一話『恋人』は、彼から突然別れ話をされた三十路のキャリアウーマンの話。第二話『夫婦』は、若年性アルツハイマーの夫から、妻であることを忘れられた看護師の話。第三話『姉妹』は、実家に戻るよう説得しに来る妹から逃げる家出中の姉の話。第四話『親子』は、心臓が弱く出産に耐えうるかを心配される妊婦の話。

 「コーヒーが冷めないうちに」では、あまりにも与えられた時間が短い。結局のところ「現実は変わらない」のも、虚しい気がする。それでも過去のあの時に戻って(第四話は未来に行って)、どうしてもあの人に会いたいと願う4人の女性。過去の滞在から現在に戻ってきた彼女たちは、どう変化しているのか――。もしそんな都市伝説の囁かれる喫茶店があって、その席が空いていたら、あなたは座りますか?

BOOKウォッチ編集部 Yukako)
  • 書名 コーヒーが冷めないうちに
  • 監修・編集・著者名川口 俊和 著
  • 出版社名株式会社サンマーク出版
  • 出版年月日2015年12月 6日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数四六判・348ページ
  • ISBN9784763135070
 

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