読むべき本、見逃していない?

一人の女性の激動の十数年を描いた、白石一文の大長編

私という運命について

 白石一文の『私という運命について』は、2005年に株式会社KADOKAWAより単行本として刊行され、08年に文庫化された。本書は累計30万部となり、ロングセラーを記録している。500ページの大長編であり、かつ著者の巧みな表現力が冴えわたり、たいへん読み応えがある。特に20~40代の女性の方に、ぜひ手にとってほしい1冊。

 主人公・亜紀は、1986年施行の「男女雇用機会均等法」に基づく女性総合職第一期生として、大手メーカーの営業部に総合職として勤務する。亜紀は、2年前に別れを告げた元恋人・康と後輩の結婚式の招待状を受け取り、出欠の返事を出しかねていた。結婚式に出席するには、康と別れた当時、康の母・佐智子からもらった手紙を読み終えなくてはと亜紀は考え、途中まで読んでしまい込んでいた手紙を再び開く。

「選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです。未来など何一つ決まってはいません。しかし、だからこそ、私たち女性にとって一つ一つの選択が運命なのです。女性は運命を紡ぎながら生きていくのです。あなたを一目見た瞬間、私には、私からあなたへとつづく運命がはっきりと見えました」

 佐智子の手紙をきっかけに、亜紀は「運命」を意識し、自問自答を繰り返しながら、自らの手で未来を選び取って生きていこうとする。亜紀は年齢とともに過酷な経験を重ね、恋愛、結婚、出産という人生の重大な局面で決断を下していく。絶望的な状況に立たされても何とかしてその場から前進しようとする亜紀は、芯の強い自立した女性に思えて、同世代の身として見習いたい。

 物語の始まりは、バブル崩壊後、細川連立内閣が成立した1993年。そこから95年の阪神淡路大震災、ポケベルから携帯電話の時代の幕開け、97年の香港の中国返還、神戸連続児童殺傷事件、2001年のアメリカ同時多発テロ、04年の新潟中越地震までの11年間の時代設定。著者は元週刊誌記者の経歴があり、政治や社会問題などの世相を詳細に描写し、物語に反映させている。平成を振り返る意味でも、興味深い描写が多い。

 著者の白石一文は、1958年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年に『一瞬の光』でデビュー。各紙誌で話題となり、累計35万部を突破。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞、10年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞した。BOOKウォッチでは『一億円のさようなら』を紹介している。

BOOKウォッチ編集部 Yukako)
  • 書名 私という運命について
  • 監修・編集・著者名白石 一文 著
  • 出版社名株式会社KADOKAWA
  • 出版年月日2008年9月25日
  • 定価本体720円+税
  • 判型・ページ数文庫判・512ページ
  • ISBN9784043720040

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