忙しい日々の中で、自分を見失いそうになったり、他人と比べて自己嫌悪に陥ったり、自信をなくして落ち込んだ経験は誰しもあるだろう。
今回は、「私って一体......」と、"自分"という存在が揺らいだ時に読む本をBOOKウォッチ編集部のメンバーが選んだ。揺らぐ理由もそれぞれ。シチュエーションごとに紹介しよう。
『野心のすすめ』
2013年刊。退職、結婚、移住、出産を経て30歳になった頃、妻・母としての自分はいるけれども、1人の人間として自分はこのままでいいのか......という気持ちが芽生えてきた。本書は当時話題になっていて、「人生は何度でもリセットできる」の帯コピーに希望を感じて手に取ったと思う。
野心という「前輪」と、努力という「後輪」。この2つを回し続けて夢を実現してきた林真理子さんが、「野心」と「努力」を強くすすめる1冊。「第四章 野心と女の一生」で女性も仕事を、と説いているのが印象的だった。
何歳になっても「私って一体......」と思うことはあるけれども、久々に読んで改めて鼓舞された。最近停滞気味かも、という人におすすめ。(M)
『リバーズ・エッジ』
あまり本を読み返すほうではないが、これは思い立って何度か読んだ。90年代の川沿いの街に住む高校生たちを描いたマンガ。ほの暗い空気感と、何か答えが出るわけではないストーリー、登場人物たちの淡々とした佇まいが落ち着く。インスピレーションが欲しい時にもよく読む。
直近で読み返したきっかけは、推しているアイドルの熱愛疑惑が発覚したこと。相手の女性が矢沢あいさん(マンガ『天使なんかじゃない』『NANA』などの作者)のファンで「私は矢沢あいより岡崎京子派だわ......(これしか読んだことないけど)」という理由だった。(H)
『黄小娥の易入門』
昼ごはんから結婚まで、人生、決断の連続とはよく言われるが、そのたびに人の心は揺れ動く。気持ちが揺れれば揺れるほどに、自分の「現在地」、またその先の「進路」を知るための道しるべがほしくなるもの。その道しるべの一つが、「占い」だろう。
「人生には波があります。(中略)もしもあなたが波の底に沈んだとき、もがけばもがくほど、くたくたになって、海の底に吞まれてしまいます。こういうときには、一枚の板にでも身をまかせ、呼吸(いき)をととのえ、力をたくわえて待てば、こんどは大きな波に乗ることもできます。『易(えき)』とは、そのつぎにやってくる波を、まえもって予知する術です」(はじめに)
この本は、中国古来の占い「易」を、初心者にもわかるように再解釈したもの。コイン6枚あれば、自分で自分を占うこともできる。少し内容は古いが、自分のバイオリズムを探る材料になる。もちろん、大切な決断は常に自分が引き受けないといけないのだが――その「ヒント」がほしくなったとき、コインを片手にめくりたくなる本。(T)
『人生ドラクエ化マニュアル - 覚醒せよ! 人生は命がけのドラゴンクエストだ!』
大概のことは一晩眠れば忘れるほうだが、大きなダメージは引きずってしまう。この本は、大学時代にドラクエが大好きなこともあり、なんとなく手に取った。辛いことや困難があっても「ドラクエのように考えればいいのか」と、なんだかよくわからない納得感があった。自信がない時は自分を俯瞰で見ることが難しいけれど、コントローラーを持って自分を操作しながら、RPGを進めていくイメージを持つと気持ちが軽くなる。(O)
『コトバノ森』
書家、中塚翠涛さんの作品集。TBSドラマ『SPEC』に出てくる筆文字が非常に美しく、書いた人が気になって調べたら、この本に出合った。私は小中学校時代に書道教室に通い、社会人になってから再び趣味で書道をしているのだが、心が揺らいだ時、毛筆や筆ペンで心の中の言葉を書き出す(書き殴る)と落ち着く。それでも心がささくれ立ってしまう時はこの作品集を見て、「こんな字書いてみてーなー」とウットリしている。(O)
『心脳問題 : 「脳の世紀」を生き抜く』
数か月間、まったく仕事がない時期があり、時間だけはあって、自分の存在理由を考えると目が回るような気分になったときに読んだ本。自分とは何なのか、自分を自分と意識する心は脳の作用なのか、否、脳とは別に心があるのか、といったテーマを「心脳問題」ということを何かで知り、入手したのは思い出したが、あらためてこの本を手に取ったところ、10年近く前に中古品を購入した記録が出てきた。「正気を保つための常識と作法」というフレーズに惹かれたのかもしれない。
考えることや感じることの多くが錯覚であり、"自分"というものがあると考えること自体、確実かどうかはわからないと書かれている。古代から現代まで探求され続けながら「心脳問題」は解決に至っていないこともわかり、半端もんの自分が揺らぐのも当たり前か、と勝手に納得して、少しずつ不安定な自分を肯定できるようになった気がしている。(S)
『みんなのしいたけ.相談室』
いくつになってもふと自分探しを始めてしまうので、揺らぐほどの"自分"ってものがないのがそもそもの悩み。「私って一体......」と無限ループにはまりそうになったら、人生相談本であらゆる人の悩みを覗き見る。
占い師のしいたけ.さんは、決して否定せず、相談者に寄り添う回答にほっとする。また、星座が持つ性格に合わせたアドバイスには、発見がある。320ページにわたり91もの相談が掲載されているので、ドンピシャではなくとも共通項が見つかると思う。
同じく「寄り添い系」なら燃え殻さん、ズバッと解決してほしい時は鴻上尚史さん、愛のお叱りを受けたい時は美輪明宏さんなど、さまざまな視点を知ることで、意外な「自分」が見つかることも。第三者目線って大事だなと思う。(N)
「みんなのしいたけ.相談室」の紹介記事はこちら→超人気占い師しいたけ.による91のお悩み相談。「大人の傷の癒し方」
春は新生活が始まったり、環境が変わったりすることの多い、揺らぎの季節。あたらしい一歩を踏み出すためにも、本からヒントをもらい、自分をしっかりと見つめ直す時間をつくりたい。
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