本を読み始めたら続きが気になってやめられず、気がついたら朝だった、なんて経験はないだろうか。それは、面白いから? 怖いから? それとも......。今回は、BOOKウォッチ編集部のメンバーが選んだ「眠れなくなるほど〇〇な本」を紹介しよう。
まずは面白くて眠れなくなる本から。朝起きられないのは困るけれど、本好きにとって幸せな体験をもたらしてくれる作品だ。
『蜜蜂と遠雷』
国際ピアノコンクールに挑戦する4人を描いた群像劇で、直木賞&本屋大賞ダブル受賞作。「言葉だけでこんなに音楽を表現できるのか!」と驚いた。最初から最後まで、食べても食べてもおなかいっぱいにならないごちそうのような文章が詰まっている。当時高校生だったが、比喩でなく本当に授業以外の時間ずっと読むのをやめられなかった。(H)
『真夜中乙女戦争』
大学入学を機に上京した青年が、いかがわしい「かくれんぼ同好会」、そして謎の男「黒服」に出会い、ある犯罪計画に巻き込まれていくスリリングな物語。決して爽快な読感ではない。高カロリーで、ずっと"気持ち悪い"。なのに、展開が気になってぐいぐい読まされてしまう。衝撃のラストシーンは思わず天井を仰いで「やられた!」......この作品には完全降伏。(H)
『鹿の王』上・下
2015年の本屋大賞受賞作。前年に国際アンデルセン賞を受賞した上橋菜穂子さんによる、医療サスペンスにして壮大な冒険小説。謎の感染症、国同士の争い、動物や自然と人間との関わり、信仰、家族、愛......。深淵なテーマが複雑に絡まり合い、感動のラストへと続く。ページをめくるのももどかしく、文字通り眠れなくなるほど面白かった。
過去にひとつの国を滅亡に追いやった恐ろしい感染症「黒狼病(ミツツアル)」と、それを利用しようとする狂信的な小民族(現代で言うなればテロリスト)の復讐心、為政者たちの思惑など、現実にいま起きていることと重ねて考えずにいられない。(N)
一方で、怖くて眠れなくなる本もある。背筋が寒くなるのにどうしても読むのをやめられない、そんな2冊がこちら。
『ぼぎわんが、来る』
映画『来る』として、実写化もされた「第22回日本ホラー大賞」受賞作品。映画は怖さよりもグロテスクな表現、また心がザラつく人物像が目立ったが、小説で読むと「ぼぎわん」の恐ろしさがとてつもない。読んだ日はベッドに入ることすら怖くなり、夜通しバラエティ番組の録画を見て朝を迎えたぐらい、暗闇が怖かった。2作目の「ずうのめ人形」、3作目の「ししりばの家」もそれぞれ違う角度の恐怖心を刺激するので、ホラー作品が好きな方はこのシリーズのイッキ読みをおススメする。(O)
『金田一少年の事件簿』
小学生のころ、床屋で何げなく手に取り、「オペラ座館の殺人」の話を読んで、怖くて眠れなかった。そこからドハマりして、今でも暇があると読み返している。スピンオフ作品も豊富にあり、中でも『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』は、子どものころ「本当にこんなことできんの?」と心の中で突っ込んでいたことが、犯人視点でコミカルに描かれており、原作が好きな人なら腹を抱えて笑えるのでぜひ読んでほしい。(O)
『ぼっけえ、きょうてえ』
明治時代の岡山の遊郭の女が客に語り始める怪奇譚。幽霊とかサイコとかではなく、現実に合った話として語られる。仕事のストレスが相当あった時期に、そのストレスを忘れるために、仕事とはまったく関係のない話でストレス発散を目指して読んだが、布団の中でまさに身の毛がよだつ感覚に襲われ、思わず本を閉じた記憶がある。思い返して全部読んだが、本当に眠れなかった。二度と読み返そうとは思わず、古本屋に売った。これを選ぼうかと思いながら、思い出すのが嫌で躊躇していたが、編集長に促され書いた。日本ホラー小説大賞受賞。題名は岡山弁で「とても、こわい」の意味。(S)
BOOKウォッチの紹介記事はこちら→背筋凍ったら岡山県民? 『でえれえ、やっちもねえ』が「ぼっけえ、きょうてえ」
宇宙の果てには何があるんだろう、死んだらどこへ行くのか......などと考え始めたら眠れなくなるように、思考を止められなくなる作品はこちら。
『人間臨終図巻』
古今東西の英雄から、作家、俳優、救世主、犯罪者まで、あらゆる人々の「臨終」前後の様子や言動を、没年齢順にひたすらにまとめた本。ひとつひとつの記事はコンパクトだが、劇的な死に方、かっこいい死に方、見苦しい死に方、ついてない死に方――バリエーション豊かすぎる「臨終」の数々に、「もう一人、あと一人......」とついつい夜更かしに。ページを閉じたら閉じたで「自分はどんな臨終を迎えるのか?」と考えだして、なかなか眠れなく......。(T)
『毎月新聞』
1998年10月から2002年9月まで、毎日新聞に月1で掲載された日本一小さな新聞「毎月新聞」。「ピタゴラスイッチ」の生みの親であるクリエイティブディレクターの佐藤雅彦さんが、その月に感じたことを独特のまなざしと分析で記した1冊。
「#木曜日は本曜日」で鈴木おさむさんが「人生を変えた本」として紹介していて、刺激をもらえそうだったので読んでみた。当時の世の中の出来事も記されていて、21世紀を迎える前後の4年間がいきいきと蘇る。なにより、ここまで観察・思考して生きている人がいるのかと驚く。
たとえば、「情報の力関係」という項がある。1枚の紙に「→」「左を見よ」と書かれている。このとき、みんな最初は右を見る。それは「矢印が放つ不思議な磁石のような力」が眼差しを右にもっていこうとするから。このように、情報の要素には力関係が生じる。どんな要素が効果的なのかを毎日確認しつつ、佐藤さんは表現活動をしているという。何でもない日常が一気に興味の対象になる。自分なりの「世の中考察」をはじめたくなる。(M)
『生かされて生きて―元ひめゆり学徒隊"いのちの語り部"』
年に1、2回ほど沖縄に行く機会があり、元ひめゆり学徒隊の与那覇さんが書いたこの本を手に取った。深夜2時ごろ読了したが、まったく眠ることができなかった。本当に日本で起きたことなのかと痛ましく思うと同時に、なにも知らずにいた自分に恥ずかしさと怒りを覚えた。与那覇さんは当時多くの友人が目の前で命を落とし、自身も命の危機にさらされるなど、悲惨で悲愴な戦火を生き抜き、今は語り部として後世に同じ過ちを繰り返してはならないと啓蒙している。機会があれば話を聞いてみたい。(O)
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?