好き嫌いが多い! 食育ってどうするのが正解? 子どもの食事には悩みがつきものだ。
食に詳しい小児科医の伊藤明子(みつこ)さんが、悩める親にアドバイスをくれる。伊藤さんの著書『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)からその一部をご紹介しよう。
~以下、本文より~
→ ポジティブに出し続けることが大事
■子どもが食べなくても、落ち込まないで
ある研究で、子どもが嫌がって食べないものでも、8~15回食卓に出すことで、食べられるようになることがわかっています[*1]。栄養のために食べてほしい食材を子どもが食べなかったとしても、大丈夫です。
子どもが食べるようになるためのポイントは、
●親が食に対して、前向きに取り組むこと
●親も楽しく食事をすること
です。「これは子どもの心と体にとってよいことだ」と前向きな姿勢でいることはとても大切です。そして親がおいしそうにしながら楽しく食べていると、子どももやがて食べるようになります。
毎回の食事が「食べる」「食べない」をめぐるバトルになるのはとても悲しく、避けたいことですね。食べることは本来うれしいこと、楽しいことであり、つらいことではないのですから。
→ 発達や安全性の観点からもよくない
■「見ながら食べ」「歩き食べ」はOK?
テレビを見ながら食べると肥満リスクが上がるという研究があります[*2]。
どの年齢であっても、できれば、テレビ、パソコンモニター画面などがオフになっている環境での食事が望ましいです。食べ物の色、形を見て、香りを感じて、口に入れたときの食感も味わいながら食事をしましょう。さらに一緒に食事をしている人とお話ししながら食べるのが理想です。
また、歩き食べもNGです。お行儀が悪いということ以前に、窒息リスクが上がります[*3]。
走り回りながら食べた、多すぎる量を口に入れてしまったなど、食事に集中しないことにより、命を落としてしまったお子さんが何人もいます。
→ 複数人での食事がよいことが、さまざまなデータでわかっている
■子どもが1人で食べるのはOK?
食事の時間に子どもが1人で食べている家庭も多いと思います。当クリニックの患者さんでも、いくつもそのような家庭があります。家庭の事情で仕方のないことではありますが、できるだけ個食、孤食とならないように、工夫をお願いしたいです。
1人で食べる人たちと、複数で食卓を囲む人たちでは、食事のバランス、 野菜の摂取量、 全体的な健康度、テロメア長(染色体の先端部分。長いと長生きする)など、さまざまな分野で差が出ることが研究でわかっています[*4]。
この孤食の問題は、個々の家庭ではなく、社会全体で考えるべきことです。いろいろな事情で子どもを1人にせざるを得ない家庭があることを忘れず、それぞれができる形でフォローできたらと考えています。
(参考文献)
*1 Carruth BR, et al. Prevalence of picky eaters among infants and toddlers and their caregivers' decisions about offering a new food. J Am Diet Assoc. 2004 Jan; 104
(1 suppl 1):57-64
*2 Avery A, et al. Associations between children's diet quality and watching television during meal or snack consumption: A systematic review. Matern Child Nutr. 2017 Oct; 13(4):e12428.
*3 https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=123 (2022年11月20日)
*4 堤ちはる.「食」を通じた子育て支援ー幼児期からの食事に望むものー.
小児保健研究. 2011; 70巻記念号:7-9.
https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2011/0070s1/004/0007-0009.pdf (2022年11月20日)
~以上、本文より~
「嫌がる食材でも8~15回は食卓に出す」「ながら食べはさせない」「1人の食事はなるべく避ける」という、子どもの食事にとって重要な3つのポイントをご紹介した。ぜひ、できることから取り入れてみてほしい。
『医師が教える 子どもの食事 50の基本』では、子どもの食事で気をつけたい50のポイントを紹介している。「食欲がない」「皮膚が弱い」などのお悩みに答えるコーナーや、伊藤さんおすすめの子どものためのレシピも収録されている。
■伊藤明子さんプロフィール
いとう・みつこ/赤坂ファミリークリニック院長。東京大学医学部附属病院小児科医。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら二児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。とくに子どもの食を医学的な観点から研究しており、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもをもつ親からの信頼は厚く、メディア出演も多い。著書に『医師がすすめる 抗酸化ごま生活』(アスコム)などがある。
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