育ちざかりの子どもには、毎朝しっかり食べさせたい! でも、忙しい朝は「パンだけ」や「おにぎりだけ」になりがち。何を食べさせたら健康・発育にいいのだろうか?
子どもの食に詳しい小児科医の伊藤明子(みつこ)さんが、「毎朝食べてほしい」と激推しする食材がある。それは、卵だ。
良質なたんぱく質を豊富に含む卵。毎朝しっかりたんぱく質を摂ると、体が丈夫になるだけでなく、なんと「人にやさしくなれる」のだそうだ。卵のすごさ、そしておすすめの食べ方は? 伊藤さんの著書『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)から、詳しい解説を見てみよう。
~以下、本文より~
→効率的にたんぱく質が摂れる
(※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。)
〈データ・事実〉
◆ 卵は良質なたんぱく質を含んでいる。
◆ 朝食にたんぱく質をしっかり摂ると、周りの人にやさしくなれるという研究がある。
〈こうして食べる〉
◆ 調理法は、ゆで卵が一番おすすめ(糖化が少ない調理法)。
◆ 卵の独特な硫黄のにおいが苦手な子には、オムレツにしてケチャップ少量、またはゆで卵にしてマヨネーズとケチャップを少し混ぜたオーロラソースなどでにおいを消す。
■卵はどうして体にいいの?
「卵を食べすぎるとコレステロール量が増える」というイメージが強く、いまだに卵は控えたほうがいいと思っている方がいます。
しかしこれは誤解です。食品に含まれるコレステロール量が血液でのコレステロールに影響しないという研究結果が相次ぎ、卵の制限はしなくてよいと発表されています(2015年)[*1]。
卵は良質なたんぱく源なので毎日1~2個食べるのがおすすめです。
人間に必要なたんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されており、卵はその20種類のアミノ酸すべてをバランスよく含みます。体内で作ることができない9つのアミノ酸を効率よく摂れる、とても優秀な食材です。
■どうして朝食に卵を食べるといいの?
1995年の研究で、たんぱく質をしっかり摂った人と摂らなかった人を比較したところ、「たんぱく質を摂らなかった人の攻撃性が増した」という結果が出ています[*2]。
また2017年の研究では、朝食にたんぱく質をしっかり摂った人と摂らなかった人では、「しっかり摂った人は、周囲の人をより受け入れることができた」という結果が出ています[*3]。
つまり、周りの人にやさしく接することができたということです。
ですから朝食のメニューには、ぜひたんぱく質を取り入れてください。おだやかに1日を過ごせるようになります。たんぱく質のなかでも卵は取り入れやすいのでおすすめですよ。調理法はゆで卵がよいでしょう。
■朝、昼、晩にたんぱく質を
たんぱく質は、筋肉や骨、皮膚のもとになるだけではありません。ウイルスや菌などに感染したときに働く抗体やホルモン、幸せホルモンのセロトニンをはじめとする、脳内ホルモン(神経伝達物質)のもとにもなる大切な栄養素です。
しかし摂取したらすぐに代謝(化学反応で別のものに変化すること)されるので、たんぱく質は体の中に貯めておくことができません。ですから毎食、たんぱく質を含む食事を心がけてほしいところです。
クリニックの診察室でお話を聞いていると、ほとんどの子どもがたんぱく質を摂っているのは「給食」、もしくは「夕食」。「朝食」にたんぱく質を摂っている子は少数です。焼き鮭や豆腐のみそ汁を朝食の献立に加えてみてください。
朝食、昼食、夕食、それぞれでたんぱく質の摂取を心がけましょう。毎食、手のひら(指の先まで)1杯分のたんぱく質食材を食べることをおすすめします[*4]。
(参考文献)
*1 菅野道廣. 卵と健康:コレステロール問題を中心に. 日本食品科学工学会誌. 2019; 66(9):362-367.
*2 Cleare AJ, et al. The Effect of tryptophan depletion and enhancement on subjective and behavioural aggression in normal male subjects. Psychopharmacology (Berl). 1995 Mar; 118(1):72-81.
*3 Strang S, et al. Impact of nutrition on social decision making. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Jun 20; 114(25):6510-6514.
*4 Tagawa R, et al. Dose-response relationship between protein intake and muscle mass increase: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutr Rev. 2020; 79(1):66-75.
~以上、本文より~
おすすめの調理法は「糖化」が少ないゆで卵とのこと。「糖化」とは焦げた状態のことで、老化の原因になる。食べる際には気をつけたい。
卵は、体も心も健康にしてくれる頼もしい食材。さっそく明日の朝食から取り入れてみてはいかがだろうか。
『医師が教える 子どもの食事 50の基本』では、子どもの食事で気をつけたい50のポイントを紹介。「食欲がない」「皮膚が弱い」などのお悩みに答えるコーナーや、伊藤さんおすすめの子どものためのレシピも収録している。
■伊藤明子さんプロフィール
いとう・みつこ/赤坂ファミリークリニック院長。東京大学医学部附属病院小児科医。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら二児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。とくに子どもの食を医学的な観点から研究しており、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもをもつ親からの信頼は厚く、メディア出演も多い。著書に『医師がすすめる 抗酸化ごま生活』(アスコム)などがある。
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