今年もつらい花粉症の季節がやってくる。どうにか症状をやわらげたい! そう思っているあなたに朗報だ。
花粉症の症状を改善してくれる食べ合わせがあるという。それは、「ヨーグルトとすりゴマ」だ。教えてくれるのは、子どもの食に詳しい小児科医の伊藤明子(みつこ)さん。いったいなぜヨーグルトとすりゴマが花粉症に効くのか、伊藤さんの著書『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)の解説をご紹介しよう。
~以下、本文より~
→ 花粉症、アレルギー対策になる
(※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。)
〈データ・事実〉
◆ 2020年に行った私の研究で、すりゴマをかけたヨーグルトを食べることで、花粉症の症状が緩和されることがわかった。
〈こうして食べる〉
◆ ヨーグルト100gにすりゴマを大さじ1杯かける。
◆ 白ごま、黒ごまのどちらでもOK。
■どうしてヨーグルトにすりゴマがいいの?
花粉症はアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎のこと。スギやヒノキなどの空中に飛散している花粉が原因で、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ・涙目・集中力の低下といった諸症状をもたらすアレルギー疾患です。
みなさんご存じのとおり、日本では花粉症は大人だけでなく子どもの患者さんも年々増加しています。つらい症状に悩む人が多く、毎年春の訪れとともに憂うつな気分になる人も少なくないでしょう。
そこでぜひ試してほしいのが、ヨーグルト+すりゴマの組み合わせ。これを毎日食べることで、花粉症の症状が明らかに改善することがわかりました。
ヨーグルトとすりゴマがいい理由は、それぞれが腸内環境を整えてくれる食品だからです。「花粉症と腸内環境って関係があるの?」と思うかもしれませんね。じつは、口から入った病原体などを撃退するために、腸にはたくさんの免疫細胞があります。そして、花粉症などのアレルギー疾患は、免疫が正常に働いていないことが原因。だから腸内環境を整えて免疫細胞が正常に働くようにすることが、アレルギーを抑えることにつながるのです。
腸内環境を改善するには、善玉菌と善玉菌のエサとなる食物繊維を一緒に食べることが必要不可欠。ヨーグルトは善玉菌が豊富、すりゴマは食物繊維が多く含まれるということで、ベストな組み合わせなのです。
またゴマの成分セサミンは、抗アレルギー物質で、花粉症の症状を和らげる効果も期待できます。実のままのゴマは皮が固いので消化されづらく、そのまま体外に排出されてしまうことも。黒でも白でもいいので、すりゴマがおすすめです。
ヨーグルト100gにすりゴマ大さじ1杯が目安です。
■日本人を対象とした研究で成果が出た
2020年の春に日本人を対象に、私が行った研究をご紹介しましょう。2020年末には論文として発表しています[*1]。
次の内容で調査を行いました。
●普段の食事に「ヨーグルト」を4週間足した人 = 15人
●普段の食事に「ヨーグルトとすりゴマ」を4週間足した人 = 15人
●普段どおりの食事の人 = 15人
以上の3グループに分かれて実施。調査前後の身長体重測定、血液検査、腸内フローラ検査、アレルギー症状質問票から変化を調べました。
「ヨーグルトとすりゴマ」を4週間摂取したグループは、①目のかゆみ、②なみだ目、③水っぱな、④くしゃみ、⑤鼻づまり、⑥勉強・仕事・家事の支障、⑦精神集中の不良、⑧思考力の低下(考えがまとまらない)、⑨倦怠感、の合計9つの項目において有意に改善しました。
目・鼻の症状の合計(P=0.0004)、生活の支障の合計(P=0.002)、症状・生活・全般の総合計(P=0.001)でも有意な改善が見られました。
このかっこ内の数値が0.05以下の項目は、「統計学的に有意」な改善です。つまり、偶然、たまたまの結果ではなく、統計学的な解析をして、変化があったといえる違いだった、ということです。
(参考文献)
*1 Itoh M, et al. The effects of long-term intake of yogurt together with ground sesame on eye and nasal discomfort due to allergic rhinitis and allergic conjunctivitis-A randomized parallel-group comparison study-Jpn Pharmacol Ther. 2020; 48(11):1961-1974.
~以上、本文より~
研究で実証されている、「ヨーグルトとすりゴマ」の効果。毎年ひどい花粉症に悩まされている記者もさっそく食べ始めてみた。ゴマは白ゴマにしたが、粒の細かいシリアル感覚で、思っていたよりも食べやすい。これなら毎日続けられそうだ。
『医師が教える 子どもの食事 50の基本』では、子どもの食事で気をつけたい50のポイントを紹介している。「食欲がない」「皮膚が弱い」などのお悩みに答えるコーナーや、伊藤さんおすすめの子どものためのレシピも収録されている。
■伊藤明子さんプロフィール
いとう・みつこ/赤坂ファミリークリニック院長。東京大学医学部附属病院小児科医。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら二児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。とくに子どもの食を医学的な観点から研究しており、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもをもつ親からの信頼は厚く、メディア出演も多い。著書に『医師がすすめる 抗酸化ごま生活』(アスコム)などがある。
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